東芝「量子暗号通信」実用化へ日本初、解読不可能な暗号化…

東芝は「量子暗号通信」と呼ばれる次世代の暗号技術を2020年度アメリカで実用化します。実現すれば日本企業としては初めてだということです。

東芝のホームページに「量子暗号通信:Quantum Key Distribution(QKD)」のことが書かれています。https://www.toshiba.co.jp/qkd/index_j.htm

量子暗号通信は、医療データや金融取引等、秘匿性の高い情報を安全にやり取りするために用いられる暗号通信技術の一つです。解読不可能な暗号化を行うためには、暗号文とその鍵を安全に伝送することが必要となります。量子鍵配信(QKD)では、この暗号鍵を光子に乗せて伝送します。光子が何かに触れると、必ず状態が変化するという量子力学的な性質を利用して、第三者による鍵の盗聴を確実に検知することが可能です…

ホームページには、英語の動画解説もあります。

東芝は1991年に英国にケンブリッジ研究所を設立し、量子暗号の基礎研究を進めてきました。

暗号化した情報とその解読に必要な鍵を、微弱な光に乗せてやり取りする仕組み..これがポイントのようです。

不正に解読しようとすると、光の状態が変化するため鍵として使えなくなり、絶対に解読されないのだそうです。

この研究成果をベースに、すでに日本で実用化研究を推進していて、2020年1月14日には東北大学と共同で、世界で初めてヒトの遺伝情報を解析した全ゲノム配列データを送る実証実験に成功したことを発表しています。

これにより、量子暗号技術が大容量データの伝送に活用できること、またゲノム研究・ゲノム医療の分野において実用レベルで活用できることを実証しました。

2020年の今年から「量子暗号通信」を用いたビジネスを、医療や金融、政府関連など秘匿性の高い情報のやり取りが求められる用途ではじめます。

米国から順次、グローバルに事業を拡大していき、市場のメジャーシェアを取っていくと意気込んでいます。

「実用化に耐え得る水準まで技術を高めてきた」と東芝サイバーフィジカルシステム推進部の江島克郎サブプロジェクトマネージャーは技術に自信を見せています。

防御と攻撃は、まさに「盾と矛」の関係で、暗号資産普及には不可欠なブロックチェーン技術も、量子コンピューターの発達で安全性は守られるのかという疑問もあるようです。

解読不可能なものを作れば、技術の進歩で解読できるようになり、さらに強固な突破不可能なものができても、さらにその上を行くという、まあ技術は「いたちごっこ」なのではないかという心配もあります。

だからこそ、「量子コンピューター」の台頭こそが、東芝が、量子暗号の実用化に踏み切る背景にあると主張しています。

量子コンピューターの流れを見ますと、カナダのスタートアップ企業、Dウエーブ・システムズが2011年に量子コンピューターを世界で初めて商用化し、米グーグルも2019年10月、既存のスーパーコンピューターを超える性能を独自開発の量子コンピューターで実証したと発表しました。

世界中で開発競争が活発化しており、量子コンピューター時代がいよいよ到来しようとしています。

量子コンピューターの登場で脆弱性が増すのが「暗号」技術で、普及している暗号技術は、短時間で解けない数学の問題を基にしているため、量子コンピューターによって容易に解読される可能性があるとしています。

グーグルの量子コンピューター技術が発表された際には、代表的な暗号資産(仮想通貨)のビットコインが急落したことが、その恐れを裏付けていると思われます。

だからこそ、情報漏洩を完全に防げるとされる「量子暗号通信」は、量子コンピューター時代に必須のセキュリティー技術になり得ると、東芝は自信を持っているわけです。

さらに東芝は、量子暗号通信の実用化で、ビジネスモデルの変革も狙うとしています。

サブスクリプション(定額制)サービスの導入です。

すべてを東芝で手掛けるわけではなく現地のパートナーと組んで、ハードウエア機器を売るわけではなく、複数年の契約を結びサービスで提供していくビジネスモデルを展開するとのことです。

   いろいろあった、あの東芝の復活なるのか…

量子暗号通信は、東芝が注力する新たな「デジタル事業」の1つとして、利益率が3割、場合によっては6割に高まるビジネスになると、期待を寄せています。

2019年4~9月期の連結営業利益が前年同期比7.5倍の520億円になるなど、業績は回復しつつある東芝ですが、売却した半導体メモリー事業のような柱がないとの指摘は多くありました。

東芝では量子暗号通信の関連市場が2025年に50億ドル(約5500億円)を超え、2035年に200億ドル(約2兆2000億円)市場になると予測しています。

東芝は量子暗号通信の分野で2つの世界一を有していると主張していて、様々な機関・業種に技術が普及すれば、大きなシェアを獲得できるかもしれないと、期待を寄せています。

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