竹中平蔵氏発言で火がついたベーシックインカム構想、ポストコロナ社会のキーワードになるのでしょうか…

新型コロナウイルス感染で入院する前に、ボリス・ジョンソン英首相が、全国民に最低限の所得を保障する「ベーシック・インカム(BI)」を検討する考えを示したことが話題になりました。

多くの新型コロナウイルス感染者を抱えるスペインでは、経済の立て直しに向け、可能な限り迅速に「ユニバーサル ベーシックインカム(最低所得保障制度)」制度を導入することを決定したことが報じられました。

日本でも少子高齢化加速により疲弊しきっている社会保障制度の代替案として、公の場では論じられてはいませんが、一部の人の間では、「ベーシックインカム」導入案ががささやかれています。

日本で最低所得保障制度(ベーシックインカム)に対する議論に火をつけたのは、竹中平蔵・東洋大学教授(元経済財政相)が9月23日のBS-TBSの番組で、一定所得以下の国民を対象に毎月7万円を支給するベーシックインカムの導入を提言したことにあります。

竹中氏は、一旦は国民全員に支給して、マイナンバーカードに国民の所得を紐付けしてから一定額以上の人を判別して返納してもらうことや、現金を支給する財源として、今の生活保障制度や年金補償制度からの給付を打ち切ることで捻出するという案を打ち出しました。

「生活保護や年金がいらなくなる」とも言及したことから、「ベーシックインカムの導入によって社会保障費を削減しようとしている」と強い批判が巻き起こりました。

そもそも、働かなくても生活に最低限必要なお金がもらえるということの是非も、議論されている制度です。

世界の「ベーシックインカム」制度事情

フィンランドでは、このベーシックインカム制度の社会的実証実験が行われました。

25歳から80歳までの約17万5000人の失業者からランダムに2000人を選んで、毎月560ユーロ、日本円だと約7万円を2年間無条件での給付をはじめました。

実際に給付を受けた人の感想としては、明日を生きるための資金繰りに追われることなく、自由な時間を手にすることができたと好評のようです。

実験は、仕事のあり方の変化への対応と、労働市場への人々の復帰を促すことが目的にあったとされています。

この実験は既に終わっていて、評価結果は今年末に行われるようですが、参加者は「健康、ストレス、気分と集中力に関する問題が明らかに少ない」としているようです。

毎月560ユーロ(約7万円)だけでも安心感が得られる、将来に対する安心感こそ幸福の基盤だと、評価は良いようです。

カナダのオンタリオ州でも、2017年7月から、ベーシックインカム導入実験は行われていましたが、政権が変わって、現在のダグ・フォード首相になって打ち切られました。

導入実験ではオンタリオ州の4000近い人が毎月、無条件でお金を受け取っっていました。

オンタリオ州のベーシックインカム導入実験では、

   年収3万4000カナダドル(約292万円)以下の人は
                年間最大1万7000カナダドル(約146万円)
   年収4万8000カナダドル(約412万円)以下のカップルは
                年間最大2万4000ドル(206万円)

つまり所得の50%を受け取ることができたようです。

実験は3年間の予定でしたが、コスト高を理由に、現政権が打ち切ったようです。

オンタリオ州のベーシックインカム導入実験は世界でも最大規模のものだったといわれています。

最も期間が長いものとしては、ケニアでの12年におよぶプロジェクトがあります。

ケニアの実験は「人類史上最大のユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)実験」と呼ばれているようです。

MIT(マサチューセッツ工科大学)の学生によって設立されたNPOにより、ランダム化比較試験(RCT)を用いた、エビデンスレベルの高い、信頼性の高い研究が、ケニアで行われています。

ケニアでは、200の村を3グループに分けて、そのうちの

   40村  毎日0.75ドル/月22.50ドルのBIを12年間支給
   80村  毎日0.75ドル/月22.50ドルのBIを2年間支給
   80村  全額まとめて支給

支払対象者は16000人

という内容で実験を行っています。

ちなみに、フィンランドもRCTによる実験です。

ベーシックインカム制度の行方は…

ユニバーサル・ベーシックインカムというアイデアは何世紀も前から存在し世界各地で試されているのですが、様々な意味合いを持つようになったこの制度の最も純粋な定義では、富や収入、雇用状態に関わらず最低限の収入が無条件で全ての人々に与えられるというところにあります。

似たような制度として現在実施されているのが、米国で見られる「フードスタンプ(補助的栄養支援プログラム)」です。

低所得者に向けた食料支援サービスのことで、食品購入時に銀行カードのように使用する電子カードとして給付される金券の一種で、米国内のほとんどの食料品店で使うことができます。

貧富の差が激しく、少数の富裕層と大多数の貧困層で社会が成り立っている米国ならではの制度とも言えますが、現在、4000万人のアメリカ人がフードスタンプを受給しており、これに政府は6兆円の予算を割いています。

3人家族であれば、世帯年収が約270万円を割り込むと受給資格が生じますが、この基準は各州の経済実態に合わせて上振れするようです。

1964年にジョンソン大統領によって施工された貧困対策の一貫です。

ベーシックインカムに関しては、イデオロギーの対立を越えたものでもあるようです。

左派は貧困問題対策、格差を是正して職のオートメーション化の脅威に対応できると主張していますし、右派の支持者は、福祉支出の複雑なシステムを単純化でき、政府の縮小化を実現できると言っています。

ベーシックインカム制度の問題は、コスト面と労働意欲にあると言われています。

ベーシックインカムの導入には、ある程度の財源の確保が必要で、日本で考えると、20歳以上に限定して月10万円支給しようとしても、日本の成人人口はおよそ1億500万人なので、年間で約105兆円が必要になります。

その財源を確保するためには、一般的には大幅な増税が避けられないでしょう。

国債発行も考えられます。

これに関しては現在のコロナ対策では、政府が経済対策のために国債を発行しても、それを日銀が無制限で買うということになりました。

ベーシックインカムで最低限の生活が保障されると、待遇面に不安を抱きながら仕事をすることがなくなりますし、誰もやりたがらないような過酷な労働を収入のために行う必要もありません。労働自体を拒否する人が出てくる可能性もあります。

怠け者の貧困層と言われているようです。

ただし、ベーシックインカムは最低限の給付なので、それだけで生活していくことは困難です。ですから、労働時間は減っても、働く人の減少にはならないと見られています。

ちなみに、マーク・ザッカーバーグやイーロン・マスクのようなテクノロジー分野の億万長者は、自分たちの極端な富への怒りが高まる中、ベーシックインカム制度の考えに支持を表明しています。

日本におけるベーシックインカム

日本では、生活保護を必要とする人は約200万人いるそうで、生活保護で受給される金額は10万円~20万円だそうです。

老後は年金を受給することになります。失業すれば失業給付金を受給することになります。

ベーシックインカムと今の社会保障制度との関係、端的に言えば、今の社会保障制度すべてをベーシックインカムに置き換えるのかという議論もあるでしょう。

そうなれば、毎月の社会保険料や税金のことも考える必要があります。

そう簡単にすぐに導入できるという話ではないですが、ただ日本には、生活保護レベル以下の生活をしながら、生活保護を受給できない「隠れた貧困層」が、全国で2000万人以上いると言われています。

covid-19により、自粛養成が続き、経済活動が停滞している状況では、今後はウイルス感染で死亡するよりも生活困窮で自殺する人が大幅に増えてくると言われています。

いきなりベーシックインカム議論にはならないでしょうが、1人10万円支給を1回だけ行うことで、国民の生活を守ることはできないくらいに、国民は疲弊してくると思われます。

今までにない、かなり思い切った対策を考えないといけない状況に、日本はあると思います。

世界の流れがベーシックインカムに向かうとするなら、果たして日本はどのように対処していくのでしょうか。

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