富士通がテレワークへ移行…通勤手当がなくなる、出社しなくていい働き方が広まりそう

withコロナ・postコロナ + 働き方及び会社のあり方…

富士通は7月6日、2022年度末までにオフィスの規模を半減すると発表しました。今後は約8万人の国内グループ社員を対象に、在宅勤務を標準とした働き方に移行するとしています。

   フレックス
   テレワーク

2020年7月をめどにコアタイムのないフレックス勤務制度を導入し、新型コロナウイルス感染拡大対策として取り組んできたテレワークを継続します。

テレワークに関しては、2017年4月に正式導入し、新型コロナウイルスの感染拡大にあわせて、在宅勤務が増加し、緊急事態宣言後は9割が在宅勤務となっています。

現在はオフィスへの出勤率を従来の約25%に抑えています。

富士通が掲げる「Work Life Shift」

ニューノーマル時代における新たな働き方…それを、新常態の働き方「Work Life Shift」として推進していくことを宣言しています。

富士通 執行役員常務 総務・人事本部長の平松浩樹氏は

Work Life Shiftは、リアルとバーチャルの双方で、常につながっている多様な人材が、イノベーションを創出しつづける状態をつくることを目指す…

働くということだけでなく、仕事と生活をトータルにシフトし、Well-beingを実現することをコンセプトにしたものであり、それを実現するために、固定的な場所や時間にはとらわれない働き方の実践と、社員一人一人の高い自律性と相互の信頼によって取り組んでいくことになる…

と述べています。

具体的には、リモートワークを活用することで、従業員が働く場所を、それぞれの業務目的に最も適した形で自由に選択できるようにするほか、オフィス全席をフリーアドレス化し、2022年度末までに、オフィスの規模を現状の50%程度に最適化するというものです。

フリーアドレスとは、従来のオフィスでの、決められた位置にデスクを配置して一人一台デスクが与えられて働くスタイルではなく、社員が個々の自席を持たず自由に働く席を選択できるオフィススタイルのことです。

「自席」という概念をなくし、空いている席や自由な場所で働くというのが「フリー(=自由な)アドレス(=所在)」です。

それに伴い、福利厚生等諸制度の見直しも行われます。

平松執行役員常務は、「富士通は、ニューノーマル時代や、将来の環境変化に対応するためにDXを実践し、お客さまのリファレンスとなるような新たな働き方を、Work Life Shiftとして取り組む。ソリューションやサービスにつなげることを念頭におく。それがDX企業としての富士通の使命である」と述べています。

DX(Digital transformation)とは、企業を取り巻く市場環境のデジタル化に対応するため、企業が行うあらゆる経済活動やそれを構成するビジネスモデル、ならびに組織・文化・制度といった企業そのものを変革していく一連の取り組みのことです。

Well-beingとは、言葉を直訳すると、「幸福」「健康」という意味で、健康については、1946年に署名された世界保健機関(WHO)憲章 の前文にあるとおり、単に病気ではない、弱っていないという肉体的かつ精神的な問題ではなく、肉体的、精神的そして社会的にも、すべてが満たされた状態であることを意味します。働き方改革において、強く意識される概念がWell-being(ウェルビーイング)です。

Work Life Shiftは、

  • 最適な働き方を実現する「Smart Working
  • オフィスのあり方を見直す「Borderless Office
  • 社内のカルチャーの変革を進める「Culture Change

の3つの要素から構成されるという。

最適な働き方を実現する「Smart Working」

Smart Working では、仕事内容や目的、ライフスタイルに応じた最適な働き方を、社員自らが自律的に使い分けるもので、「これまでは固定的なオフィスに全員出勤することを前提とした勤務制度や各種手当、福利厚生、IT環境が整備されていたが、これらを全面的に見直し、時間や働く場所にとらわれないスマートな働き方を実現する」というものです。

通勤定期券廃止、単身赴任制度廃止

2020年7月から、コアタイムのないスーパーフレックス勤務を、製造拠点や顧客先常駐者などを除いて、約8万人の国内グループ全従業員に適用することで、通勤定期券を廃止して、代わりに、在宅勤務のための環境整備費用補助金「スマートワーキング手当」月額5000円の手当を支給します。

スマートワーキング手当は、テレワークの環境整備として必要な通信料、光熱費といった自宅で発生する費用や、机やいすなどの費用補助となっていて、全社員に支給されます。

また、単身赴任を順次解除するそうです。

現在は単身赴任中の社員の仕事内容を精査して、テレワークと出張で対応できるかを棚卸しして、対応可能な社員については、随時、単身赴任を解消するとし、テレワークや出張で対応できると判断した場合は自宅に戻って働けるようにします。

さらに、介護や配偶者の転勤などの個人的な事情によって転居を余儀なくされたりする場合でも、テレワークや出張を活用して、遠隔地からリモートで変わらず働けるようにします。

客先に常駐している社員もテレワークに移行できるよう、顧客との交渉も進める方針だとのことです。請負業者や派遣社員は現在、特定の条件を満たした場合のみテレワークが可能となっている条件も緩和するとしています。

   通勤という概念をなくす
   社員が生活と仕事の時間配分を自ら考えられるようにする

これが、富士通の新しい職場となります。

オフィスのあり方を見直す「Borderless Office」

Borderless Office では、勤務する場所に縛られない働き方と、それを支えるオフィスの実現を目指します。

これまでは、規模の差はあっても共通していた全国の事業所の環境・設備を、今後は業務の目的やコミュニケーションのスタイルにあわせて再編し、それぞれにあわせた形でリノベーションして、目的とロケーションから社員が選択し、自律的に利用することになります。

ハブオフィスとサテライトオフィスをあわせ、今後3年をかけて国内の既存オフィスの床面積を、現在の50%程度に最適化し、全席をフリーアドレス化し、快適で創造性が発揮できるオフィスを構築するとしています。

従来のオフィスとシェアオフィスの併用

テレワークを推進しながらも、オフィスは廃止せずに、残すオフィスは2種類に分けます。

既存のオフィスは、

  • 主要拠点であり社内外の交流の場として使える「Hub Office
  • 高性能なビデオ会議システムを備え、ミーティングの拠点として使える
    Satellite Office

の2種類に再整備します。

外部のシェアオフィスの契約数を拡大し、それぞれに異なる環境も用意します。

外部のシェアオフィスは、都心や郊外の駅に近接する物件を中心に契約し、社員が出張や往訪を余儀なくされた場合に、すきま時間に働けるようにします。

社内では「Home & Shared Office」と呼称するとしています。

富士通のオフィスは

  • Hub Office
  • Satellite Office
  • Home & Shared Office

の3つに分類され、業務上の都合で出勤が必要な場合や、勤務環境を変えてリフレッシュしたい場合などに、社員が目的に応じて使い分けられるようにするようです。

まさにpostコロナでの新しい職場のあり方ですね。

従来のオフィスに戻りたい人は少数派

テレワークでは対応できないと思われていた業務が、ITリテラシーの向上やペーパーレス化、仕事のやり方をテレワークに適用させるといった工夫によって、かなりの業務が対応可能であることがわかりました。

また、在宅勤務のストレスや不安を解決するには、コミュニケーションの重要性がわかるようになり、そこにITが活用できることも理解できました。

テレワークによって生産性が上がっていると答える企業も多いようです。

富士通では、社員3万5000人を対象にアンケートを採った結果、今後の働く場所として望ましい状況として従業員の回答は

   自宅とサテライトオフィスの組み合わせ・・・3割
   自宅とサテライトオフィス、通常のオフィスの併用・・・5割

だったようです。

従来のようにオフィスに出社する環境に戻りたいという社員は少数だったそうで、働く場所を選択したいという社員が多いという結果になりました。

用途にあわせてオフィスの環境を選択するということが、社員が望んでいることであることがわかりました。

勤怠管理が変わる

勤怠管理とは、使用者(企業や事業所)が従業員の就業状況を適正に把握することを指します。具体的には、タイムカードやICカードなどの勤怠管理システムを利用し、始業から終業までの時刻、時間外労働、有給休暇取得の状況などを記録し、チェックを行います。

これに基づいて適正な賃金の支払いにつなげ、過剰労働の早期発見や防止効果が生まれ、従業員の健康維持やひいては法令遵守にも結び付くものとされています。

ただこの前提は時間給の考え方で、時間管理が労働管理という従来の働き方に立ってのものとなっています。

いわゆる「メンバーシップ型」と「ジョブ型」の労働形態の違いがあり、前者は、会社に集まることでf業務を行うことを前提としたもので、後者はプロジェクト重視の成果型の労働となります。

テレワークは後者の「ジョブ型」、つまり時間管理ではなく成果重視の考え方に変える必要があります。

富士通では、管理職向けに導入しているジョブ型人事制度(仕事内容を基軸に据え、等級や報酬を決める人事制度)を、一般社員向けに拡大する計画もあります。

徐々に、日本独特の労働の考え方を変えていくのでしょうが、富士通は、出勤した社員の勤務状況は、子会社・富士通アドバンストエンジニアリングのトラッキングシステム「EXBOARD OFFICE」で管理するとしています。

PCやスマホのWi-Fi接続状況をもとに、誰がどこにいるかを特定できるもので、新型コロナウイルスの感染者が出た場合に備え、社員の行動履歴を把握します。

新型コロナウイルス対策としてフロアに人が密集しないよう、取得したデータはレイアウトの変更に生かしたり、打ち合わせの際などに、アサインした人を探す手間を省く効果も見込んでいます。

目指すのは

   テレワークの全面導入によるオフィス縮小
   オフィス全席をフリーアドレス化
   オフィスの規模を現状の50%程度に最適化

実現目標は2022年度末までです。

この他、全社員に社用スマートフォンを支給するか、BYOD(私用端末の業務利用)を認め、業務連絡を効率化します。スマホは業務システムと連携させ、資料や研修の教材を社員がいつでも閲覧できるようにするそうです。

社内のカルチャーの変革を進める「Culture Change」

Culture Change においては、社員の高い自律性と、会社が社員を信頼する「ピープルマネジメント」の高度化が重要だとし、「これを実現することが企業文化の変革につながる」と述べた。

信頼に基づく制度設計やプロセスの確立のために、制度やプロセスのシンプル化、上司や人事のチェックおよび承認の最小化を図り、各種社内手続きをオンラインでセルフサービス化するためにITを活用します。

また、社員一人一人の役割と期待の共有、適切な評価を行うジョブ型人事制度を導入し、上司と部下による、月1回のワン・オン・ワンミーティングをすべての階層で実施するということです。

さらに心身面でのサポートために、社員の声を随時吸い上げるためのデジタルプラットフォームや、仕事の状況を可視化するプラットフォームを導入します。

2020年度中には、一般社員に向けた適用を視野に入れて労働組合と話し合いを開始します。

富士通は2020年4月から、1万5000人の管理職を対象にジョブ型人事制度を導入し、各ポジションの責任と権限を明確にしていて、適材適所ではなく、適所適材の実現を目指すとしています。

加えて、社内公募制度を2020年度から大幅拡充します。

新任管理職にも公募制度を活用、これは、社員の自律的なキャリア形成を促す仕組みにもなるとしています。社内の人材の流動化が進み、多様化の実現につながると期待しているようです。

ストレスチェック

   定期的な司・部下間の1対1のミーティングやストレスチェックを実施

心身面でのサポートために、社員の声を随時吸い上げるためのデジタルプラットフォームや、仕事の状況を可視化するプラットフォームを導入します。

リモート下においては、在宅勤務をずっと続けることで、ストレスや不安が生じることが、話題になっています。これを解消するにはコミュニケーションが重要として、現場社員だけでなく、マネジャーも目の前に部下がいないと不安になりがちの状況から、安心して働けるように気を配っているようです。

同時に、従業員の不安やストレスの早期把握と迅速な対応を目的に、「パルスサーベイ」と呼ぶ、簡易的な調査を短期間に繰り返し実施する手法を用い、従業員の満足度をもとに組織と個人の関係性の健全度合いを測るとしました。

FUJITSU Workplace Innovation Zinrai for 365 Dashboard

テレワークの効率を高めるため、AIを使って社内メールや文書のタイトル、スケジュールなどのデータを分析し、個々人の働き方の課題を抽出する富士通のシステムです。

蓄積されたメールや文書のタイトル、スケジュールなどのビッグデータ、PCの利用状況を蓄積して仕事内容や業務負荷をAIが分析して可視化し、このデータをもとにして、上司と部下のコミュニケーションを通じ、仕事内容の効率的な割り振りにつなげるなどの生産性向上を図ります。

どのような仕事に、誰が、どのくらい時間をかけているのかといったことを、業務内容から作業、対象、テーマといった観点でAIが分析します。組織や個人の事務的作業のシステム化や効率化、クリエイティブな業務へのシフトが可能になります。

   作業進捗の把握
   負荷状況の可視化
   長時間労働の常態化の防止

といったテレワーク実施上の課題を定量的に見ることができ、解決が可能になり、テレワークでのデメリットと言われている部分も改善していきます。

これまではPCでしかできなかった各種社内申請や業務システムとの連携も、スマホで対応します。そのことで、いつでもどこでもコミュニケーションが行え、業務遂行が可能になります。

2020年4月からは、外部のWeb教育コンテンツを会社負担で視聴できる環境を整備しており、社給スマホを使って、自宅やカフェ、移動中でも費用を気にすることなく自己研さんができるようになっています。

「作業進捗の把握、負荷状況の可視化、長時間労働の常態化の防止といったテレワーク実施上の課題を定量的に見ることができ、解決が可能になる。また、働き方の可視化による生産性向上が可能になり、どのような仕事に、誰が、どのくらい時間をかけているのかといったことを、業務内容から作業、対象、テーマといった観点でAIが分析する。組織や個人の事務的作業のシステム化や効率化、クリエイティブな業務へのシフトが可能になる…」とのことです。

大手企業がテレワークがすすめば、富士通のように定期券支給がなくなることが予想されます。それはただでさえ乗客数減少で経営状況が圧迫されているJRや私鉄の収益にも、大きな影響が出ます。

他企業も追随すれば社会のあり方が変わる

定期券発行は、鉄道会社などの交通機関にとっては、大きな安定した収入源です。

大手企業の出張がなくなるだけでも、鉄道や航空会社等には影響が出ますし、ネットミーティング普及で、ホテル業界も厳しい状況に追い込まれることになります。

つまり、大企業の働き方改革は、日本経済にも大きな影響を及ぼすのです。大手企業のサラリーパーソンの行動が変わることで、経済のあり方も大きく変わります。

その変化のスピードは、今後ますます進んでいくと思われます…

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