医療費のしくみ・・・膨れ上がる医療給付費を考える…

医療明細をじっくりと見たことがありますか。

医療機関にかかると、必ずもらう領収書、いまはそれに必ず「診療明細」というのがついてきます。そこに患者さんに請求した内容が記載されています。

一般に料金の組み立ては二通りあります。

  • 積算方式
  • 包括方式

前者は請求額の根拠を明示して、その積み上げた額を請求するというもので、後者は請求額の内訳を明示しないで総額だけを提示するものです。

後者のポピュラーな例は旅行代金です。

     二泊三日○○の旅 28500円
     宿泊費、JR代金込み
     現地食事代別

といった感じです。

積算方式は中身が透明で良いのですが、必要と思われる項目を積み上げれば総額は増えます。一方包括方式は、中身が見えないですが総額は決まっているので、上限は決まっていると言えます。

医療費は「積算方式」がとられています。

医療費請求は点数制で、医療行為ごとに厚労省が点数を決めています。1点10円となっていて、患者さんに手渡す明細書にも点数が記載されています。

高血圧の患者さんに食事指導したら「指導料」がつきます。検査をすれば点数が加算されます。

皆保険制度の見方を変えると…

ここで皆保険制度の考え方を整理しておきましょう。

私たちが医療機関にかかると、窓口でお金を払いますが、実は私たちは窓口以上に医療にお金を払っているのです。

それが「医療給付費」です。

その源泉は、給与所得者は毎月天引きされている社会保険料であり、自営業者は国民健康保険料です。

毎月の社会保険料を負担して窓口でも負担していることを考えると、実は私たちは、自分の医療に対する費用は全額自己負担しているのではないかと思いますね。

自分だけでなく、医療費負担ができない人の分も肩代わりしてあげているのです。

医療機関としては、かかった治療費を全額もらうために、患者さんに窓口で払ってもらった残りを国に請求します。それが医療給付費であり、その原資は、私たちが支払う保険料なのです。

医療費の仕組みは、窓口負担が増えれば、保険料から成り立つ保険制度からの支給は減ります。

皆保険制度とは、そういう仕組みになっています。

つまりその名の通り「皆保険」は、みんなで全国民の医療費を負担しようという制度なのです。

皆保険制度を経営という側面で見て見ますと…

医療という商売は、一人当たりの患者さんにかかる医療費(窓口収入+後で請求する医療給付費)は大きい、つまり客単価が大きいので、患者数はそこそこでも診療所や医院(クリニック)は経営できるのです。

しかも確実に回収できるもので、取り損ねることはありません。

私たちが窓口で払う金額は数千円でも、一人の患者さんの医療費は万単位になっていることもあるのです。

俗っぽく言えば「客単価が高く確実に回収できる商売」は、おなじ「客待ち」ビジネスでも、時間単価が大きいと言えます。

あくまでもお金の流れから見た話で、医療に関わる仕事は大変なのはよく理解していますし、医療には敬意を持っています。

いま問題となっているのは「医療給付費の増大」

皆保険制度は、戦後所得が上がらない状況においては、非常に有効な制度だったと思われます。

保険制度としてのプールにも余裕があったので、高齢者や生活困窮者への配慮も十分に行えていたものが、今はプール自体がままならなくなってきました。

収支バランスが崩れたのですね。

少子高齢化が進んだ結果だと言われていますが、いま政府は高齢者に、医療費負担増をお願いしています。

収支バランスを改善するには

  • 収入を増やす
  • 支出を減らす

「支出」に当たる医療サービスを削るわけには行かないので、「収入」に当たる保険料を増やすために、パートタイマーの人たちを含め、保険料納付者数を増やすことを決め、さらに、高齢者の窓口負担を増やそうとしているのです。

そもそも医療費自体が高いのでは…

-収支バランスを改善するための収入増には限界があります。日本の人口は減少傾向にあるわけですからね。

保険料というのは、人口が増えようが減ろうが、扶養家族がいようがいまいが、生命保険に入っていようが入っていなかろうが関係なく計算されます。

保険料計算において、税金とは違い、「控除」という概念は存在しません。

物価上昇でも給料が上がらないなかで、これ以上社会保険料があがると、可処分所得が減ってしまいます。

    可処分所得 = 給料総額 - (税金 + 社会保険料)

それゆえ、医療制度における「支出の改善」を考えたほうが良いと思いますね。

いま国が行っている支出改善は、ひとえに医療給付費を抑えることで、それには

  • ジェネリック医薬品の普及
  • 未病、予防の徹底

を中心に据えています。

それでも医療制度の財政事情は改善されないので、ここは、医療費単価を下げる、医療点数を下げることを考えたほうがよいのではないでしょうか。

あるいは思い切って、医療費を、積算方式から疾患別包括方式に変えることが、今の医療財政改善の近道のような気がするのですがね。

ただ病院経営においては、収入が減ることになります。

その際には、病院側も、患者さんへの保サーニスメニューを充実させるなどの対応を考え、医療機関同士の競争を促すのも良いのではないかと思いますがね。

医療における積算方式と包括方式のメリット・デメリット

出来高払いの積算方式では、医療機関は、何らかの医療行為をすればそれに見合った診療報酬を得られるので、必要な医療をやりやすいという利点があります。

一方で、いろんな医療行為をやればやるほど、医療機関が受け取る額が増えるので、過剰診療になりやすいという問題があります。

いわゆる薬漬け、検査漬けを招き、医療費の膨張につながることが懸念されます。

包括方式は総額が決まっているので、必要性のはっきりしない投薬・点滴・検査が減り、医療費を抑えやすいことが利点が考えられます。

投薬や点滴、検査などをどれだけやっても医療機関の受け取る総額は変わらないという観点で医療費抑制に直結すると言われています。

ただし、手術、特別な薬・検査・処置などは別扱いで出来高払いとなります。

一方で、医療機関にしてみれば、投薬や検査は、収入にならないのにコストだけかかるの、過少医療、つまり手抜きが起きる可能性があります。

いわゆる利益率を上げるためのコストダウンが過小医療に繋がるという指摘です。

また、入院料が同じ額なら、投薬や検査がいろいろ必要な患者は歓迎されず、入院を受け入るかどうかの場面で、患者の選別が起きる可能性があります。

でもこれって医療機関としてのモラルの問題になりませんかね。

経営という側面での医療、それはそれで大事な側面ではありますけどね。

    積算方式では過剰医療と背中合わせ
    包括方式では過小医療・手抜き医療と背中合わせ

ですね。

国が推奨する医療費支払い制度「包括医療費支払い制度方式(DPC)」

DPC:Diagnosis Procedure Combination

PDPS(Per Diem Payment System)とも言われる、診断群分類に基づく1日当たり定額報酬算定制度のことです。

積算方式と包括方式を組み合わせたもので、入院患者さんに適用してる制度です。

入院期間中に治療した病気の中で最も医療資源を投入した一疾患のみに厚生労働省が定めた1日当たりの定額の点数からなる包括評価部分(入院基本料、検査、投薬、注射、画像診断など)と、従来どおりの出来高評価部分(手術、胃カメラ、リハビリなど)を組み合わせて計算する方式です。

DPCでは、病名の分類ごとに包括評価入院期間が決められており、この期間を超えた日から「出来高払い方式」での計算となります。

これは厚生労働省が医療機関に、月ごとの患者さんの平均在院日数を抑えるように厳しく指導しています。厚生労働省の指示を超えた場合は、医療機関にペナルティが課せられるようになってます。

入院中の食事代は従来どおりの金額を負担することになります。

2003年に急性期入院医療における新しい包括評価制度(DPC制度)として誕生しましたが、入院患者さんに適用で、外来患者さんには従来の積算(出来高払い)方式のままとなっています。

入院施設を持たない開業医は、今までどおりの積算(出来高払い)方式です。

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