アベノミクスを検証する~「リフレ派の功績」「金融政策」

リフレ派の功績も見てみましょう…

安倍政権誕生には、海外投資家は非常に歓迎ムードでした。

なにより、黒田東彦アジア開発銀行総裁が日銀総裁に就いてすぐに述べた「物価目標(インフレ目標)2%」の衝撃は大きかったですね。

今までの日本における金融政策で、将来の物価目標を設定したことがなかったわけで、海外では当たり前となっている政策も、ようやく日本も取り入れたという海外評価を受けて、日本株は大きく上昇しました。

そもそも、世界の資金の流れは大きく変わろうとしていたときでした。

リーマンショックによる金融不安から、世界同時株安が激しく起こり、世界マネーは、リスク資産から大きく引き上げられていました。

欧米各国とも、大規模な金融緩和政策をとり、禁じ手とも言われる量的金融緩和を行い、とにかく市中に資金を大量に供給することで、経済を支えようとしました。

米国は何度も大規模な量的緩和を行い、欧州では、EUが加盟国に資金を供給できる制度を作り、イタリアやギリシャを支える資金供給制度を確立させました。

これを受けて、マーケットが安心して、ちょうど世界マネーがリスク資産に戻ってくる流れが出来上がってきたところに、日本では安倍政権が誕生しました。

そこに黒田総裁の「物価目標2%設定発言」です。

言い方は悪いですが、すでにマーケットに資金が流れる状況にはなっていたところだったので、安倍総理でなくても日本株価は上昇する状況だったのです。

ただ、その流れを上手く利用したというところでは、アベノミクスはうまく追い風に乗って世間の評価を得たと言えます。

それは、安倍政権が「何もしていない」うちに円安になり日本株価は上昇したことに見て取れます。

その状況下での黒田総裁の「物価目標2%」メッセージは、まさに「お金がかからない経済対策」と言えそうです。

雰囲気だけで景気は変わる、その典型だった出来事です。

その後、日銀は、実際に「大胆な金融政策」で、欧米とともに、大規模な量的金融緩和を行っていきました。

物価目標設定は財政出動がセット

通常は「物価目標設定」とセットで行わなければならないのが「財政出動」です。

ここで財務省は、財政出動を行ったものの「大胆」ではなかったのですね。

物価が上がると家計は苦しくなります。

なにせそれまでリーマンショックでリストラの嵐でしたし、給料はずっと上がらない中で、物価だけが上がったのですから、国民生活は大変です。

それをカバーするために公共投資を行うなどして雇用を支え、国民の生活を支える財政出動を行わなければならなかったのです。

その状況で消費税率を引き上げたのですね。

ただ、株式投資をしている人たちはウハウハで、企業は、株価が上がることで企業価値は上がりました。

企業の内部留保金は膨らむ一方ですが、それが国民には降りてこなかったのです。

トリクルダウンはなかった…

株式投資をしている人の資産は膨らむ…格差の拡大が始まっていったのです。

富裕層が儲かれば、やがてはシャンパンタワーのように、下に位置するグラスにもシャンパンが注がれるはずだったのですが、何故か、上部のグラスでシャンパンの流れは止まってしまったのです。

思っていた以上に、頂上にあるシャンパングラスが大き方のでしょうかね。

シャンパンタワーは「滝状態」にはならなかったのです。トリクルダウンは起こらなかったのです。

消費税率引き上げは景気の足を引っ張った…

「リフレ派」と呼ばれる人たちの考え方は、経済が良くなれば、企業業績が良くなってその分、税収が増えるというものです。

つまり、増税をしなくても景気を引き上げることが財政再建にはよいとする立場です。

基本、安倍総理もその立場だったのですが、民主党との三党合意の縛りからか、財務省の突き上げが強かったのか、消費税率を引き上げました。

間違いなく消費税率引き上げは、景気の足を引っ張ります。

2014年に消費税率を8%に引き上げたことが、アベノミクス効果を減退させたと竹中平蔵氏は指摘しています。

その後の景気回復失速、インフレ率低下を招いたと思います。

2014年、消費税率は8%になりました。

その年の11月、消費税率を8%から10%に引き上げる予定を延期しました。延期は良いのですが、8%に消費税率を引き上げた景気減速を体験したことで、それを回避するために黒田日銀が増税予定の前日10月31日に「黒田バズーカ2」を発動しました。

緊急声明で、量的質的金融緩和規模を拡大したのです。

ところが安倍総理は、その翌日の消費税率引き上げを延期しました、そして、そのことを国民に問うとして、年末には衆議院を解散をしました

黒田総裁が立て掛けたはしごは、無残にも蹴飛ばされました。結果、めちゃくちゃ大きく拡大した金融緩和政策だけが残った感じです。

どんどん市中資金量は増大、日銀資産は拡大の一方です。

安倍総理はもう一回税率引き上げを延期しましたが、景気回復は見込めず、日銀はマイナス金利に突入…

日銀はもう助け舟が出せない状態で、安倍総理は耐えかねて2019年10月消費税率10%に引き上げました。

日銀は何も援護できず景気は失速…

竹中氏の消費税率引き上げが悪いという話は理解できますが、その後の安倍総理が日銀との連携を無視して「黒田バズーカ2」をうまくいかせなかったことも、アベノミクス失敗の要因と指摘したいです。

どうせ消費税率10%に上げなければいけないのなら、あのときに、「黒田バズーカ2」の翌日にすべきだったのではないでしょうか。

自党勢力安定のための解散だったのか….

新自由主義はオワコンか…

景気を良くするために、経済活動を活発にするために、構造改革は必要だというのが、小泉内閣での「構造改革なくして景気回復なし」の大スローガンでした。

官から民へ…

政府が背負い込むものはなるべく軽くして、民間でできるものは民間に任せよう。

そうしないと政府の財政が持たない…

よく言われる「小さな政府」理論です。

社会保障を膨らましてなるべく政府の関与を増やすのが、逆の「大きな政府」理論です。

北欧の福祉国家の形がそうですね。

いまコロナ禍で議論されているのが、「小さな政府」を目指すのではなく、国が国民生活を守るために財政出動を惜しまないことだということです。

かつてイギリスは「ゆりかごから墓場まで」という福祉大国でしたが、財政が立ち行かなくなり、サッチャー政権時に「サッチャリズム」と呼ばれる、国営の水道、電気、ガス、通信、鉄道、航空などの事業を民営化し、民営化分の政府部門の経済を削減する政策に転換しました。

米国では、同じ頃に、レーガン大統領が、減税・財政支出削減・規制撤廃などを進めた「レーガノミクス」を打ち出しました。

スタグフレーションと呼ばれる、景気が悪いのに物価が上がるという、生活者にとってはかなり厳しい状況に、米国はありました。

その中で出てきたのが、レーガノミクスやサッチャリズムと呼ばれる「新自由主義」でした。

デフレからの脱却という、日本政府のスローガンと重なりますね。

徹底した規制緩和で経済を活性化さえ、民営化推進で政府のサイズを小さく軽くするものです。

中曽根内閣で始まった国鉄民営化、電電公社、日本専売公社の民営化
小泉内閣における郵政民営化、道路公団の民営化

そして市場は市場に任せる、民間企業の競争を阻害する規制は撤廃することで競争を促進して経済を発展させる政策を、日本も取りました。

日本が「新自由主義」と呼ばれるものに、舵を切ったのです。

その副作用として、競争激化による分断、格差が広がったと、野党は批判しています。

岸田総理は、たしか自民党総裁選挙で「脱新自由主義」を掲げ、野党はこそって今までの自民党が取ってきた「新自由主義」を批判してきました。

この、財政再建が必要とする議論の横から割って入ってきたのが、「MMT理論」なのですね。

政府の政策は税収入ではなく国債で行うとする理論です。

新自由主義はオワコンか…

世界では、すでに「トリクルダウンはなかった」ことを認め始めています。

右によりすぎた政権が、真ん中あたりにより戻されてきています。

その世界の流れの中で、自民党総裁選挙があり、秋の総選挙がありました。

日本はどこに向かおうとしているのでしょうか。

それを決めるのは、私達国民の一票なのですがね…

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