今更聞けない「ダイナミックプライシングとはなに?」~ ものの価格が変わる、一物一価の終焉か…

ダイナミックプライシング…需給状況に応じて価格を変動させることによって需要の調整をはかる手法

つまり、需要過多のときには料金を引上げ、需要がないときには料金を下げて顧客を呼び込むというものです。

繁忙期と閑散期での料金設定を変えている航空運賃やJR乗車券の料金設定が「ダイナミックプライシング」で、宿泊料金や一部有料道路料金にも取り入れられています。

「ダイナミックプライシング」を日本語で表現すれば
   動的価格設定
   変動料金制
となるようで、この手法をいろんな分野で拡大していこうという取り組みがなされています。

電力の料金についても、導入に向けて社会実験が行われています。

Jリーグ観戦チケット

昨年にはJリーグ湘南ベルマーレが、シーズン後半戦よりダイナミックプライシング(価格変動制)導入しています。

試合日程、席種、市況、天候、個人の嗜好などに関するビッグデータ分析を元に、試合ごとの需要予測を行ない、需要に応じたチケット価格の変更を自動的に行なうことで、購入者のニーズに応じた “適正価格” で販売を行なう仕組みとなっています。

主催者側によれば、価格設定は、過去の販売期間中の販売実績を基に算出し、価格決定は不定期で行なわれ、1日のうちに2回以上変更になることはないようです。

ダイナミックプライシングを導入の目的のひとつとして、不当な転売行為の防止のためもあるようです。

NBA やMLB などのスポーツジャンルのチケット販売を中心に、すでに欧米では様々な業界に広く普及しています。

ダイナミックプライシングによる販売では、チケットを購入するタイミングにより、価格が変動する可能性があります。

ビックカメラの例

家電量販店ビックカメラの棚に貼られた値札が、本部からの一括送信で常に値段を変えられるようになりました。リアルタイムで値段を一括変更可能な「ダイナミックプライシング」が導入されることになりました。

ビッグカメラのダイナミックプライシングは、まさにテクノロジーを駆使したもので、値札には電子ペーパーを採用し、通信システムを備えていて、自動で価格が変動するようになっています。

従来は、店員が値札を作り直して印刷して切り貼りしていましがが、店員への負担を「ダイナミックプライシング」が解決してくれるようになった例でもあります。

今後、ダイナミックプライシングを導入する企業も増えてくるでしょう。

海外の例では…

アマゾンは、AIが自動で市場を分析してWebサイト上の表示価格に反映させるダイナミックプライシングを導入しています。

特定の商品に人気が出た場合は市場の需要が高まるので、それに伴い価格も上昇するため、まったく同じ商品であっても購入のタイミングで値段が上がってしまうケースがあります。

小売業者として世界最大規模のウォルマートは、いつ来ても他店より安いという「EDLP(エブリデー・ロー・プライス)」という戦略で成功していますが、ダイナミックプライシングを取り入れ、市場の状況によって価格を変える戦略にシフトしはじめています。

ウォルマートで購入した後に、同じ地区の競合店より高かった場合、差額を返金するという戦略まで取り入れています。

米国有名歌手のライブチケットでも採用されています。

あるコンサートツアーは一瞬でコンサートチケットが完売したものの、別のコンサートツアーでは空席が目立つという観客動員の不安定さがあり、また、コンサートチケットは転売が盛んに行われている現状を改善するために、ダイナミックプライシングはそれを阻止するものともされています。

ユニバーサルスタジオでも…

日本では、大阪にあるユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)も、2019年1月から変動入園料としてダイナミックプライシングの導入を開始しました。

春休みの学生が増える3月、中国の旧正月である春節にあたる2月と、来客数が多く見込める時の入園料は高く設定していますが、その代わりに、閑散期に入る1月の入園料は安く設定しています。

USJは2000年代には入場者数の減少があったものの、その後マーケティング戦略に成功し、今や東京ディズニーリゾートを超える勢いがあり、9年連続で入園料を値上げしています。

食品でも…

経済産業省は、賞味期限が近くなった商品の価格を下げる試みを行っています。社会問題である大量廃棄を軽減する狙いがあります。

また、消費期限が近付いた商品を店舗ごとに登録して、割引のクーポンをアプリで配信し、利用者はクーポンを提示することで、割引を受けられるダイナミックプライシングもあります。

経済産業省は実証実験を経て、2025年までにコンビニの商品すべてにRFIDを取り付けるよう進めており、ダイナミックプライシングに積極的になっています。

RFID(radio frequency identifier)とは、ID情報を埋め込んだRFタグから、電磁界や電波などを用いた近距離(周波数帯によって数cm~数m)の無線通信によって情報をやりとりするもの、および技術全般を指します。

駐車料金とダイナミックプライシング

駐車場料金でのダイナミックプライシングの導入例として、駐車場予約アプリ「akippa(アキッパ)」があります。

akippaが所有している駐車場データをAIが分析し、イベントの有無やその規模・過去の予約などを参考に、最適な価格を算出しています。

関西エリアで実証実験を行い、全国の駐車場に適用していく予定とのことです。

そう考えると、街中でよく見かける、居酒屋などで客の少ない夕方早めの時間帯を「ハッピーアワー」などと称し、割引を実施しているのも、ダイナミックプライシングの一例なのでしょう。

一物一価の終焉

企業の取り組みとして、三井物産は、ヤフーと組んでダイナミック・プライシングを手がけるためのダイナミックプラス株式会社を設立しています。国内最大手のチケットエージェントである、ぴあ株式会社も出資参画し、業務提携契約を締結しています。

前述のJリーグ湘南ベルマーレが、チケット価格設定は、ダイナミックプラス株式会社が行っています。

株式会社ダイナミックプライシングテクノロジーによるEC事業者向けの価格変動ツール「throough(スルー)」の説明では、

  • 在庫処分       段階的値下げで利益確保
  • 滞留在庫       一定期間売れていない商品値下げでキャッシュフローを健全化
  • 売上の最大化     目標販売個数未達時値下げによる個数アップ
  • 希少性の価値     残り僅かゆえの値上げ
  • 利益の最大化     最低価格算出による利益確保
  • オリジナル価格設定

となっていますが、この説明から、ダイナミックプライシングの今後の展開とビジネスチャンスがうかがえそうです。

消費者にとっても、価格面で得をする場合も想定されます。

一物一価の終焉…という表現もあります。

ただ、売り手側の思惑で価格が勝手に決められるという不安もあるようで、AIが客観的に価格を決めることで、作為的な根付を防ぐという説明も分かりますが、購入者側の感情として不公平感を感じないようにすることが大事になってきます…

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