デジタルバンク「みんなの銀行」 未来の顧客「若者層(デジタルネイティブ)」がターゲット ふくおかFG☓アクセンチュアが国内で初めて始動…
国内初のデジタルバンクを目指す「みんなの銀行」が、1月4日に銀行システムの稼働を開始し、5月下旬にサービスを開始します。
「みんなの銀行」は、ふくおかフィナンシャルグループの子会社で、既存の銀行機能をオンライン化したインターネット銀行とは一線を画す「デジタルバンク」を目指します。
それは、デジタル起点の新しいサービスを提供し、口座開設からATM入出金、振込など、全てのサービスが“スマートフォン上で完結できる”ようになります。
欧州では大手の伝統的な銀行がデジタルバンクを立ち上げる動きが活発になっていて、「みんなの銀行」の挑戦は、国内銀行のデジタル化を占う試金石になるとされています。
ふくおかフィナンシャルグループ ☓ アクセンチュア
ふくおかフィナンシャルグループは、九州を中心とした総合金融グループで、傘下に福岡銀行、熊本銀行と長崎を拠点とする十八親和銀行があります。
アクセンチュアは、アイルランドのダブリンに登記上の本拠を置く総合コンサルティング会社です。
「みんなの銀行」にはホームページがあります…
ターゲットはZ世代
「みんなの銀行」は、国内初のデジタルバンクとして、「デジタルネイティブ世代」にマッチした金融サービスを提供することを目的としています。
1981年以降生まれのミレニアル(Y世代/24~38歳)とZ世代(23歳以下)で、既存の銀行サービスがカバーできていない世代をターゲットとしています。これらの世代は10年後には日本の生産年齢人口の60%となることから、“デジタルネイティブ世代に支持される銀行サービスの実現”を目指します。
それゆえ従来の銀行の延長線上にあるシステムや業務プロセスの制約に縛られることなく、これまでにない銀行の形を作り上げていきます。
個人向け金融サービスの提供を軸として、
- 次世代バンキングシステムを活用して、全国のデジタルネーティブ世代(個人)をターゲットに、口座開設からATM入出金、振り込みなど、全てのサービスがスマートフォン上で完結できる金融サービスの提供
- 「みんなの銀行」の金融機能・サービスを、APIを介して事業パートナー(主に法人)に提供
- システム開発/運用業務の内製化を進め、システム・機能自体を提供/販売
の3つの事業ドメインを段階的に展開していきます。
既存のネット銀行との差別化については
- デジタルを前提にしたサービスのカスタマイズ性
- 他社サービスとの連携
- フルクラウドによるコスト競争力
などを生かしていき、アクセンチュア(アイルランド・ダブリンにあるコンサルティング会社)と協力してシステム構築していますが、今後は内製化を進め、フルクラウドも含め、コスト競争力を高めていくこととしています。
銀行が銀行を再デザイン、再定義する...
みんなの銀行の横田浩二頭取はこう強調しています。
まず取り組むのが「B2C(消費者向け)」のサービス…
すでにある「ネットバンク」と、今回の「デジタルバンク」の違いを見てみましょう…
- 物理キャッシュカードがない
- いくつものバーチャル貯蓄預金口座を作ることができる
キャッシュカードや通帳は発行せず、スマートフォンのアプリから預金や貸し越し、資産運用といった金融サービスを提供します。口座開設も24時間365日対応することになります。
お金を出し入れする際は、アプリに表示される番号をセブン銀行ATMに入力することで認証する仕組みとなります。要は、スマホがそのまんまキャッシュカードになる感じです。
口座開設はスマホ完結で、印鑑レス、郵送レス、カードレスといった具合です。
アプリは、普段遣いの「Wallet(普通預金)」と「Box(貯蓄預金)」が展開されていて、取引明細へのメモ機能窓も充実していて、お金の動きがスマホで簡単に管理できるようになっています。
他行口座やカード明細などを管理できる「アカウントアグリゲーション」により、お金周りの情報を一元管理します。
口座開設とともにJCBのバーチャルデビットカードを発行し、Apple PayやGoogle Payに登録し、スマホだけで口座直結の買い物が可能になります。
「バンキング機能を踏まえたデジタルウォレット」を目指します。
セブン銀行ATMを使った入金にも対応。また、デビットカードの還元率アップやATM入金手数料を優遇する「プレミアムサービス」も提供予定となっています。
プレミアムサービスでは、5万円まで一時的に無利息でお金を借りられる貸越サービスも提供します。
バーチャル貯蓄口座で、かんたんに預金を移し替えることができます。
みんなの銀行のサービスは、基本はすべてアプリ内で完結するようになっていて、口座間資金に動などもアプリ内で操作できます。
すべてが『デジタルネイティブ世代」に合わせた設計となっています。
主な顧客層と見込む20~30代の「デジタルネーティブ世代」は、従来型の銀行が得意としてきた画一的な対面サービスに魅力を感じなくなっていると思われ、ひとりひとりに最適化されたスマホ起点のサービスを展開することで「銀行離れ」が進む若年世代を取り込みます。
Y世代・Z世代のデジタルネイティブ世代…
Z世代のペルソナとして
面倒なことは避ける
みんなと同じはイヤ
コミュニティーを重視する
と分析し、従来の銀行では当たり前だったことを変えていきます。それまでの
対面・アナログベースの業務設計
画一的な商品ラインアップ
といった、コミュニティの概念が存在しない空間から
徹底したフリクションレスやパーソナライズ
つながる居を重視した顧客帝拳
変化に柔軟かつスピーディーな対応
の空間に変えていきます。
「フリクションレス」とは、摩擦や亀裂がない状態を表すもので、経済活動における「フリクションレス」とは、機会損失につながる支払の手間や手数料、サービス間の断絶をなくすことを意味します。
具体的にはストレスのない支払いや、スピーディなサービスの利用を実現することにあります。
キャッシュレス決済がその主なものとしてあげられます。取引の完了までに、いくつものステップ、つまり「摩擦」をなくすものになります。
また、キャッシュレス決済を使うための手続きとして、たとえば
クレジットカード情報は手入力をしなくもカメラで読み取るだけでOK
一度パスワードを登録したら次回からは指紋認証で入力不要
といった手続きの簡素化も、フリクションレスの一貫といえます。
パーソナライズに関しては、アプリを通して、それぞれが独自に現金管理ができ、旅行や結婚などの目的達成おための貯蓄プランを考えることができるようなシステムを提供します。
暮らしに溶け込んだ情報サービスを、手軽にスマホで共有できるというもので、単位金融商品を説明するだけでなく、Z世代が求めている「価格よりも体験重視」の発想に合致させる狙いがあります。
具体的には
個人向けでは、スマホ完結の口座開設で、印鑑レス、郵送レス、カードレスで、アプリで銀行サ-ビスを利用可能。普段使いの「Wallet」(普通預金)と「Box」(貯蓄預金)を展開するほか、取引明細へのメモ機能などで、お金の動きを把握できる。
また、他行口座やカード明細などを管理できる「アカウントアグリゲーション」により、お金周りの情報を一元管理。口座開設とともにJCBのバーチャルデビットカードを発行し、Apple PayやGoogle Payに登録。スマホだけで口座直結の買い物が可能で、「バンキング機能を踏まえたデジタルウォレットを目指す」という。
セブン銀行ATMを使った入金にも対応。また、デビットカードの還元率アップやATM入金手数料を優遇する「プレミアムサービス」も提供予定。プレミアムサービスでは、5万円まで一時的に無利息でお金を借りられる貸越サービスも提供する。
加えて「顧客体験」を重視していることが、今までの銀行とは違う戦略だと言えます。
人生の節目節目の、資金ニーズが高まるときに、金融機関は顧客と接点を持つことを行ってきました。つまり、日常よりも非日常のライフイベントのタイミングで、ローンや資産運用、保険といったサービスが利用されてきました。
バンカーだけでなく、様々な分野の人達と手を組んだデザインを展開していくとしています。
具体的なものは、5月のスタート時に見えてくるのでしょう…
若者を狙う背景は相続財産狙い
これだけ若者層に狙いを定めている背景には、将来相続財産を手にする世代だという音です。特に少子高齢化が進んでいますので、Y世代、Z世代は多くの相続財産を受け取る可能性が増えてきているのです。
2030年までに年間死亡数が160万人程度まで膨らみ、大相続時代が到来することになります。その規模は500兆~600兆円ともいわれ、これだけの相続が発生する見込みとなっています。
その受取人が、今の若者であるY世代、Z世代で、その年代の若者が「デジタルネイティブ世代」なのですから、商品・サービス提供者の方から若者たちの生活思考に歩み寄っていく、若者たちの嗜好に合わせていくことが必要になってきているのです。
「B2C(消費者向け)」の先に見据えるものは…
「B2C」の先に見据えるのが、消費者向け事業を手掛ける企業を支援する「B2B2C」などの領域です。
2022年度にも「BaaS(サービスとしての銀行業)」を立ち上げ、小売りやサービスなどの非金融業者に「黒子」として金融機能を提供します。永吉健一副頭取は「いかに企業やその先の消費者とつながりを持てるかが焦点になる」と話しています。
消費者が小売店で買い物するときにローンを提供したり、旅行業者に与信を提供したりすることを想定しています。
同行は2020年12月に銀行免許を取得しており、預金にひも付いたデータを基にマーケティングや与信管理ができる強みがあります。
こうした取り組みを支えるのが、アクセンチュアと開発したクラウドベースのシステムです。
みんなの銀行はシステムをゼロから立ち上げることで、利用者や顧客のニーズに応じて臨機応変にシステムを見直す体制を整えています。
将来的にはふくおかFGそのもののシステムにも同行が持つクラウドの仕組みを生かしていくほか、他の金融機関にシステムを外販することも想定しています。
大手の金融機関自らデジタルバンクを立ち上げる動きは欧州が先行しています。
このコロナ禍でデジタルバンクの取引は増え、黒字化している銀行も少なくないとのことです。
先行者の優位性を求めて、ファーストペンギンを目指す…
横田頭取はこう話していますが、日本初のデジタルバンクの成否は、日本の金融機関のデジタル化をも左右するのでしょう…
「みんなの銀行」が見つめる世界は…
九州に基盤を持つふくおかFGですが、みんなの銀行はデジタルネイティブ向けかつオンライン完結ということもあり、全国展開が前提です。Webを通したマーケティング活動を中心とし、デジタルネイティブ世代の4割は首都圏なので、首都圏を中心に顧客基盤を広げていきたいとしています。
また、BaaSによるソリューション外販については、できるだけ早い段階で、開業1年目でオファーバンキングの基本機能がそろったところでマーケティングしていきたいとのことです。
開業3年目における目標値は、顧客数120万口座、預金残高2,200億円、ローン残高800億円としています。