三菱商事がNTTと組んでデジタル商社の道へ、第一弾は食品流通分野
三菱商事は20日、NTTと人工知能(AI)などデジタル技術を使った食品や産業素材の流通分野の効率支援で包括提携すると発表しました。デジタル技術を用いてビジネスモデルを変革する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」そのものを商材として売る、いわば「デジタル商社」になる構想です。
あらゆる産業と接点をもつ総合商社の知見と、デジタルを掛け合わせた新事業として育てるとしています。
三菱商事の産業接点知見×NTTのデジタル技術
その第1弾として、食品流通分野でのデジタルトランスフォーメーションDXを支援し、セメントや建築資材などの素材の流通分野にも段階的に事業領域を広げる予定だとのことです。
両社は顧客から要望があれば、DXの商材提供だけでなく、経営に関与して企業価値の向上策も練るとのことです。
なぜ商社なのかという点を、食品流通を例にあげて説明しています。
食品流通の領域は「メーカー」「卸」「小売り」と分業が確立しており、3者がそれぞれ商材関連のデータやシステムを構築して個別に最適化を図ることが、人手が不足するなか非効率になっていると指摘し、それゆえ食品流通の全体を把握する商社の強みが生きるとしています。
無駄な在庫を減らせれば、計画的にトラックを運用して物流効率も高められます。
食品に限らず、素材の流通分野でも同様に分業による非効率な仕組みの解消が課題となっていて、あらゆる産業に網を巡らす三菱商事は、デジタル技術に強いNTTと組み、まずは流通分野のDXでプラットフォームの確立を狙うようです。
DX支援事業は、三菱商事の垣内威彦社長が唱える「事業経営モデル」という経営改革のひとつの集大成とも言えます。
全産業を俯瞰(ふかん)して事業を構想し、新たな成長を目指す…
デジタル化で産業構造が大きく変化するなか、日本は業務プロセスの改革が遅れている。DXが非常に大事になる…
三菱商事の垣内威彦社長は高い理想を掲げて、現場を鼓舞し続けてきました。
11月には中部電力と共同で約5000億円を投じ、オランダ電力会社エネコを買収すると発表し、再生エネルギー分野の強化に道筋をつけました。新たにNTTとの提携でデジタル分野での成長策も示しました。
更に、三菱商事とNTTは、位置情報サービス(ロケーションインテリジェンス)分野でグローバルサービスプロバイダーであるHERE社(本社オランダ)への共同出資を進めることで合意しました。
三菱商事とNTTは在蘭持株会社(出資比率50%:50%)を新設の上、同社を通じてHERE社の3割の株式を取得する予定です。尚、本件の完了は、関係規制当局からの承認等を前提としており、今後必要な手続きを進めます。
買収額は非公開ですが、NTTの澤田純社長は出資の理由について、HERE社が今もっている技術レベルが先端的で、世界を視野に入れてナビ分野で実績を上げてることを上げ、今回の案件で海外に進出する足がかりとなることをあげています。
運転支援や交通マネジメント。ターゲット広告支援などの面でのシナジーを見込むとしています。
デジタル地図は、米グーグル社も展開していますが、グーグルは消費者向けであるのに対し、HERE社は主に法人むけであることを挙げて「コンペティション(競合)は基本て悔いにはないと判断しているとしています。
むしろ、新たなソリューションを作るモデルもありえるし、場合によっては協業もありえると語っています。
HERE社は、カーナビゲーションや自動運転車向けの位置情報システムや高精度地図を提供する一方で、近年は、非自動車産業向け事業の強化をめざし、保有する高精度地図及び位置データを基盤としながら、物流や交通情報/ルート案内等のサービス起点でのソリューション提供力を強化してまいりました。
HERE社のソリューションは「産業DXプラットフォーム」の中核技術の候補の1つとなり、日本及び成長著しいAPAC市場における更なる事業拡大をめざしています。
三菱商事とNTTは、多様な産業における両社の事業基盤・顧客基盤・技術基盤等を活用しながら、HERE社の提供サービス拡充とイノベーションをより一層加速させ付加価値の高いサービスを幅広い産業のお客様に対して提供していきます。
位置情報サービス(ロケーションインテリジェンス)とは、これまでカーナビゲーションシステムに代表される自動車用途が中心であった位置情報を、高度化したデジタルデバイスやIoTセンサー、AIによる処理・分析等を活用しながら、幅広い産業用途向けにソリューション化、サービスとして提供するものです。