はんこのデジタル化…リモートワーク(テレワーク)の障害であるはんこは本当になくなるのか?
新型コロナウイルス感染拡大対策として、人との接触を避けるために導入されたリモートワーク(テレワーク)において、在宅勤務しているにもかかわらず、ただただ印鑑を押すためだけに会社に行かなければならないということが起こっているようです。
いま再び、日本の印鑑文化の是非が問われることになっているようです。
朝日新聞デジタル版では、竹本直一IT担当大臣は14日の記者会見で、日本の「はんこ文化」がテレワーク(在宅勤務)の妨げになっているとの指摘について「民・民の取引で支障になっているケースが多い」との認識を示し、具体的な対応策については「民間で話し合ってもらうしかない」と述べるにとどめたとあります。
記事では、竹本大臣が「日本の印章制度・文化を守る議員連盟」(はんこ議連)の会長も務めて居ることを紹介し、就任会見で印鑑とデジタル化について問われた際に「共に栄えるためにはどうすればいいかということに知恵を絞っていきたい」と述べていたことを紹介しています。
政府が出勤者を最低7割減らすよう企業に要請しているわけで、書類に決裁印が必要などの理由から出社せざるを得ないケースがあることに「しょせんは民・民の話だ」と語っていることには驚きです。
「印鑑レス」に関しては、昨年3月「デジタル手続法案」が部会了承したときに記事にしました。
MONEYVOICE
「もう印鑑やめようよ」の声を黙殺へ。デジタル手続法案が印鑑業界の圧力に屈したワケ」https://www.mag2.com/p/money/652351
昨年3月の法案策定において、記事にもありますが、日本伝統文化に切り込む「印鑑レス化」には、印鑑業界から「待った」がかったのです。
法人を設立する際に必要な印鑑の届け出の義務化をなくす案が盛り込まれていたものが、印鑑業界の反発などを受けて見送られました。
先ほどの朝日新聞デジタル版記事で、竹本大臣が、役所の届け出はデジタル化が進んでおり、役所との関係ではそういう問題は起きないと説明した根拠は、このときの」「デジタル手続法」にあります。
この法案は「業務改革(BPR)の徹底とデジタル化の推進」が基本コンセプトとなっていて、具体的には「オンライン化の徹底と添付書類撤廃」となっています。
昨年書いた記事にもありますが、情報通信技術を活用した行政の推進の基本原則として
・デジタルファースト
個々の手続・サービスが一貫してデジタルで完結する
・ワンスオンリー
一度提出した情報は、二度提出することを不要とする
・コネクテッド・ワンストップ
民間サービスを含め、複数の手続・サービスをワンストップで実現する
が掲げられました。つまり「オンライン化」を徹底することで、行政手続きの簡素化や添付書類の撤廃を図ろうとするものです。
ただしオンライン実施は「原則」であり、地方公共団体には努力義務となっています。
その実現には、本人認証の強化としてマイナンバー制度の徹底が必要とされています。
この流れの中に、法人設立における印鑑届出義務化の廃止を盛り込んだいたところに、印鑑業界が猛反発したのです。
日本での契約や商取引で印鑑が登場する場面を考えてみますと
・実印・・・土地購入、車の購入、ローン契約など
・銀行印・・・銀行口座開設、預金の引き出しなど
・認印・・・履歴書、婚姻届、請求書、郵便物の受け取りなど
がありますね。
これらの印鑑は実印を除き、100円ショップやホームセンターなどでも売られている大量生産の安価な、いわゆる「三文判」で事足りるのです。
そんな程度の形式は、本当に必要なのかと、当時も記事で指摘していました。三文判がないだけで手続が止まってしまうことに、なんの合理性があるのでしょうか。
当時、記事では「業界圧力に屈した…」と書きました。
当時ちょうど参議院選挙前だったことに注目しました。選挙のため、票獲得のための妥協だったと断じました。
いずれにしても、デジタル手続法案で、印鑑レスの動きが止められたことが、いまこのとき、リモート推進の状況下でも出社しなければならない事態を招いているのですね。
当時の記事はこう締めくくっています…
業界利益を重んじるばかりにイノベーションが遅れていく…
労働者を守るためにイノベーションは進まないのか…
日本伝統文化とイノベーションは相容れないものなのか…
さすがにウイルス対策炉言う要素が絡んできましたので、書類や手続のデジタル化が進むことを期待しますが、それでも印鑑がなくならないようであれば、もう終っていますね…