9月入学 新学年を4月から制度変更議論、緊急事態宣言で休校長期化により…

新型コロナウイルスの影響で学校の休みが長期化していることに関連し、安倍総理大臣は入学や新学期を9月に遅らせることも選択肢の一つだという認識を示しました。

この議論のポイントは、

  • 緊急事態下での休校により学びの場が失われることによる教育の遅れ
  • オンライン授業への取り組みが都道府県で格差がある事による不均衡

にあると思われます。

本来なら、このような理由ではなく、世界先進国が9月入学であることから、グローバル人材育成の観点から、日本の入学時期を見直すべきかどうかを議論すべきなのでしょう。

自ら変革できない日本の風潮

日本は、自ら進んで変革をすることができないようで、何でも強制的な圧力がないと動かないところがあります。

過去においても、「外圧」と呼ばれる、主にアメリカからの要請で、日本の社会の形を変えられてきた経緯があります。

   日本は自らイノベーションを起こせない…

これはいろんな場面で言われています。

第四次産業革命と言われ、ITやAIが生活に浸透し、業務効率化の場面でロボットが活躍する社会でありながら、日本では法改正も含め、真の意味での社会変革が遅れていました。

ただ、covid-19との戦いにおいて、人との接触を回避する動きになっていることから、ロボットの活用が必要とされ、リモートが社会に根付くようになりつつあります。

それまで全然動かなかったリモート診療(オンライン診断)も、ようやく形になりかけています。

全然普及しなかったキャッシュレスも、小銭を手にする不潔さから普及することが期待されるのも、皮肉と言えますね。

こんなことでもない限り、日本社会は変革に舵を切れないのでしょう。

ただリモート授業(オンライン授業)に関しては、こんな状況下でも遅々として進みません。

文部科学省は、大学でのリモート授業では単位を付与しないとの話もあるようです。

リモート診療(オンライン診断)に関しても、日本医師会はあくまでも緊急事態措置だと強調しているようです。

covid-19拡大収束すれば「全て元通りに戻す」ことになるのでしょうか。それほど変革を嫌がる社会のでしょうか。

9月から新学年スタート議論

そういう日本社会において、いま学校9月入学の是非が議論されようとしているのです。

あくまでも緊急事態として、学生の学びの場の提供、それにともなう学力不均衡是正のためのようですが、今の4月新学期を9月に変更する議論があるようです。

国民民主党の玉木代表は

  学びを継続し、遅れを取り戻し、格差を是正するためには
  9月入学・9月新学期に移行するのも一案だと考えます…

との発言に対し、安倍総理大臣は

   これぐらい大きな変化があるなかにおいて
   前広に様々な選択肢を検討していきたい…

と答えてはいますが、当の文部科学省の萩生田大臣は

   そんなに簡単なことではないが、
   この状況ではいろいろなことを考えていかないと
   学びの保障はできない
   各方面と調整をしながら、仮に、わが国の社会全体の問題として
   広く国民の間で認識が共有できるのであれば、大きな選択肢の1つだ…

と曖昧な答弁に終始しています

休校の長期化を巡っては教育の遅れに加え、オンライン教育などの設備が整った学校とそうでない学校との格差の問題を踏まえて、全国17の知事が行った緊急ウェブ会議では、欧米に合わせた9月入学に前向きな見解が相次ぎ、全国知事会を通じて国に導入を求めることにしています。

宮城県の村井知事は

   学校の入学、始業の時期を9月にずらすのも大きな方法
   9月入学にすれば学力差が無くなる
   今は学校をやっているところと、ずっと休校しているところで
   かなり学力差、地域格差が出ている…

と述べています。

これに対し安倍総理大臣は

   遅れている授業が補習で戻せるのか、地域差があり、心配もあると思う
   そうした皆様の気持ちに十分に添っていく必要もある
   同時に学校休業の長期化を見越して、
   9月入学、新学期について、社会全体に大きな影響を及ぼすので
   慎重にという意見もあることは十分承知しているが
   これから大きな変化がある中では、
   前広にさまざまな選択肢を検討していきたい…

と述べました。

社会全体の大きな影響とは、おそらく企業側の新卒採用スケジュールにあるのでしょう。

おそらく安倍総理は経団連とは調整していないので、はっきりとしたことは言えないでいるのかもしれませんね。

一方、9月入学に関する議論が起き始めていることに対して、文部科学省事務次官だった前川喜平氏は

   9月入学については、無責任な議論が横行している…

と主張を示して

   ちょっと真面目に考えれば、その困難さが分かるはずだ
   文部科学省で過去に何度も検討したことがある
   今の高3生のためには、大学の9月入学枠をできるだけ広げることと
   9月入学のためのセンター試験を
   来年6~7月に実施することを検討すべきだ…

と説明しました。さらに

   今年の小1を9月に入学させると、その12分の5は入学時に7歳になる
   来年以降もそうするなら、義務教育の年齢を
   「6歳から」でなく「6歳5か月から」に変えることになる
   もし来年9月の新入生を6歳に戻すなら来年の4~8月に6歳になる子も   加わるからこの学年だけ人数が4割超多くなる…

と解説しています。そして

   来年から大学を全部9月入学にすると
   来年の新入生の検定料、入学金、授業料の入金が5か月遅れになる
   私学財政には大打撃だ
   当然補償が必要になる…

とツイートしています。

リアルな問題点として

  • 大学入試制度の変更問題
  • 義務教育年齢の変更問題
  • 入学金や授業料納付による私学財政問題

なるほど、単純に「9月入学」と、カレンダー上の話ではないことは理解していますが、それに伴う変更調整業務が多いことがうかがえますね。

日本が世界から孤立して9月入学になったのはなぜでしょう…

学校といえば寺子屋ですね。藩校などがあった江戸時代はいつでも入学OK、それはなんとなくわかりますね。

現代の西洋教育が導入されたのは明治初頭で、当時はなんと、西洋と同じ9月入学が主流だったようです。

その後、1886年から企業の会計年度が導入され、それが「4月~3月」と定められ、それにあわせて、小学校や師範学校の入学時期を4月となり、大正時代には、高校や大学もすべて4月入学になったようです。

「一年」という概念には、「暦年」と呼ばれる暦上の1~12月の「一年」と、「会計年度」と呼ばれる4月~3月の官公庁が予算を執行するための「一年」の2種類が併存するのです。

この官公庁が予算を執行するための期間である会計年度は、アメリカは10月~9月です。

日本の会計年度が4月~3月になったのは、

   秋に収穫した米を、農家が現金に換えて納税してから
   予算編成をしていくには1月始まりでは間に合わなかった

からだそうです。明治時代の日本が農業国だったという事情があったようです。

その事情から、「会計年度」を「暦年」に合わすことは諦めて、イギリスの会計年度の区切りに合わせて、4月1日~翌年の3月31日を会計年度の期間に定めたのです。

これに学校の「一年」も合わせることにしたようです。

世界の学校新学年の状況

ちなみに、世界で日本と同じ、学校を4月入学にしているのはパナマだけで

   シンガポールは1月
   オーストラリアとニュージーランドは1月末~2月初め
   お隣の韓国は3月

アメリカ、カナダ、イギリス、フランスなどの先進国は9月入学となっています。中国も、9月から新学年がスタートです。

   ドイツは多種多様でちょっと複雑です。

先進国の多くでは、9月入学が主流となっているため、海外からの優秀な学生や研究者を日本の学校に迎え入れるには、日本も先進国に合わせる必要があるということは、ずっと議論されていました。

その背景には、日本が国際化を進めるうえで、教育や研究水準の向上を目指していく中では、4月入学制度を変えて9月新学年スタートにしたほうが良いと言われていました。

それでも議論が進まず、おそらくこのままでは何も変わらないであろうと思われていたところに、covid-19による緊急事態宣言に基づく休校措置が、学校制度変革を後押しすることになったように思えます。

さてこのことを学生側はどう理解してるのでしょう。

学生側の思いは…

大阪市の高校3年生2人は、インターネット上で9月新学期を求める署名活動を展開している。4月28日の9時現在で4000人を超える賛同が集まっています。

高校生の意見がネットに載せられています。

  私たち、いわゆる「受験生」の立場からすれば、外部検定の受験機会減少、  地域格差や情報格差、一般入試より早く始まる推薦入試実施の可否 などの  不安も、学校自体の始まりを遅らせることで幾分かは解消されます。

  また、グローバル化に伴い新学期を9月にずらす案は以前からあったという  ことも知りました。

   日本人の留学率を更に上げ、国際的な人材を増やす ためにも、ピンチを   チャンスと捉えて世界と足並みを揃えるべきだと考えます。

  そして、高校三年生はもちろん、学生にとって学校生活はかけがえのない時  間です。

  こうして家にいる間に、楽しみにしていた行事が、どんどんとなくなりつ   つあります。

  そしてなにより、クラスメートと一緒に勉強する時間、なんでもない話をし  ながらお弁当を食べる時間、恋愛話に花咲く放課後の時間、これら全ての何  気ない瞬間が、今、消えそうになっています。

  私たちの人生の中でかけがえのない青春の1ページに、もう一度色を塗れる  チャンスをいただけないでしょうか…

9月入学変更のネック

文部科学省の官僚たちの業務は大変になります。おそらくここが、9月入学に変更する大きなネックになるでしょう。

それはこのコロナウイルス対策でてんやわんやの状況で、新たに学校制度改定業務が加わることへの抵抗です。

9月新学期にするには、少なくとも、学校教育法施行規則の改正が必要となります。

現行法では

  第五十九条 
   小学校の学年は、四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。

となっています。中学校などにも準用されます。

学校教育法第17条に

  保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めか
  ら、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校、義務
  教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。

とあるので、この規定も改正する必要があるとされています。

学校教育法施行規則のみの改正では、たとえば、今日4月に6歳になった子は今年の9月から小1に、9月以降に6歳になる子は翌年の9月から小1年になることになり、4月~8月生まれの子と、9月~3月生まれの子が同級生ではなくなってしまうことになります。

前川氏も、このあたりを指摘していました。

何を優先するのか、そのために法改正は必要なのかであれば、どのように手続をしていけばよいかを考えていかなければなりません。

果たして本気で、学校の9月新学年スタートは議論されるのでしょうか…

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA