認知症家族が、本人に代わって預金を引き出しやすいように変える動きがようやく…
認知症により、本人が自ら預金を引き出せなくなった場合、もしその家族が窓口に来て預金を引き出そうとする場合、その対応は、各金融機関に任せているのが現状です。
認知症の本人に代わって預金が引き出せるのは、原則として、成年後見制度と呼ばれる制度で代理人になる必要がありました。銀行側も、成年後見人制度を使うことを勧めています。
しかし、成年後見制度を利用するには費用もかかりますし、何よりも、他人に資産内容を見られたくないという思いもありますよね。
認知症の方に関しての対応は、日本全国の金融機関として統一の明確な決め事はなく、すべて現場任せも状態でした。
それゆえ、各銀行の現場では、お金を引き出せないないで悩む家族の「門前払い」というトラブルは、多く見られるようになりました。
なにせ2025年には高齢者の5人に1人の役700万人が認知症になるという推計もあります。
ところが成年後見人制度利用者は、約22万人(2018年末現在)にとどまっています。
そういった社会情勢において、全国銀行協会は、認知症の人の預金を代理人ではない親族などが引き出すことを例外的に認めるとした指針をまとめました。
医療費や施設入居費、生活費などとして親族などから引き出しを求められることが多くあるということから、今回まとめた指針は「成年後見制度を求めることが基本」としつつも、法的な代理権を持たない親族への対応時の考え方を示したのです。
ただし、悪用を防ぐため介護や医療費の支払いなど明らかに本人の利益になる場合に限るとしています。
民間のシンクタンクの試算では、認知症の人の金融資産は2030年には215兆円に上る見通しですが、成年後見人を決めていないといった理由で、財産を適切に管理できないケースが今後、増えると見られています。
全国銀行協会は対応を柔軟に見直すことで財産の適切な管理につなげたい考えで、この指針を近く加盟する銀行に周知する方針です。
認知症の発症が認められると、銀行は本人の財産を守る手段として銀行口座は凍結されます。
口座名義人が死亡すると、銀行口座が凍結されるというのはよく知られていますが、相続協議中は不正が起きないよう、口座が利用できないようにするものです。
銀行口座が凍結される状況としては、下記のようにいくつかのケースが考えられます。
- 認知症発症時に、死亡時と同様に家族が認知症について銀行に告知し、口座を凍結してもらう
- 認知症を発症した口座名義人が銀行に出向き、その際に銀行側が、口座名義人である本人が意思決定能力が著しく欠け、いわゆる認知症と思しき状態になっているということに気がつき、口座を凍結するケース。
- 認知症になった本人の施設入所のために、家族が定期預金などを解約しようとして、本人と一緒に銀行へ出向き、認知症ということが判明して、凍結されるケース
そもそも、認知症が疑われる口座名義人が、詐欺や横領などの犯罪や口座の不正使用に巻き込まれ、財産を失うのを防ぐという目的のためということです。
銀行口座が凍結されてしまうと、預金の引き出しは一切できず、解約することもできません。
いまのルールでは、口座名義人本人のために預金を利用することが明確であっても、例えば介護費用の支払いや、施設入所のための契約金だとしても、お金を引き出すことはできないのです。
戸籍謄本やマイナンバーカードなどを提示して親子関係が書類上も明らかに分かるような場合でも一切引き出し、解約は認められません。
唯一できるのが成年後見者だけです。
このようなことを改善するために、今回初めて、全国銀行協会は、認知症の人の預金を代理人ではない親族などが引き出すことを例外的に認めようということなのです…