同一労働同一賃金 2020年 4月 スタート 正社員に非正規社員、派遣にパートなど多様な働き方に対して…

同一労働同一賃金制度とは

正社員と非正規社員の間で不合理な待遇格差をなくす「同一労働同一賃金」が、大企業で2020年4月から、中小企業で2021年4月からスタートします。

   同一労働同一賃金

      大企業   2020年4月から
      中小企業  2021年4月から

これは労働者がどのような雇用形態を選択しても、待遇に納得して働くことを後押しするものです。

同じ会社内で働く正社員と非正規社員の能力や成果などが同じ場合、給与や教育訓練、福利厚生などを同じ水準にし、不合理な待遇の格差をなくす考え方です。

2019年4月施行の働き方改革関連法に盛り込まれました。

この「同一労働同一賃金」の考え方は、もともとは国際労働機関で発展した考え方で、英語では「Equal pay for equal work」と呼ばれます。

欧州では、「同一労働同一賃金」原則は、
   性別や人種などの個人の意思や努力によって変えることのできない属性等を理由とする
   賃金差別を禁止する原則
として位置付けられています。

その中で、1990年代に、パート社員や契約社員について、雇用条件に関し、客観的理由に基づき正当化できる場合を除き、非正規社員であるという理由のみにより、不利な取扱いをしてはならないとする法規制が設けられました。

米国では、同一労働同一賃金を直接定める法規制はありません。

欧州は、1997年のパートタイム労働指令で「同一労働同一賃金」を定め、日本はこれをお手本としました。

欧州のような、人の本質に基づく差別をなくすという、「同一労働同一賃金」導入経緯が違うことから、今回の、日本の法改正で導入されるものは、いわばその「日本版」ということになるでしょう。

簡潔に述べれば、同じ仕事をしたら、正規社員の非正規社員も同じ待遇にする、同じ仕事をしていれば、同じように支給をしなければならないということです。

この支給には「給与」とあわせて「手当」も含まれます。

「手当」には2通りあります。「仕事に関する手当」と「生活支援の手当」で、同一条件にしなければならないのは、前者の仕事に関する手当てのほうです。

職種にもよりますが、「仕事に関する手当」としては

通勤手当
給食手当
作業手当
皆勤手当
作業手当
無事故運転手当

などが想定されます。

また、仕事に関する勉強会参加費用補助や資格取得手当なども、不合理な格差を生じてはいけないことになります。

たとえば、通勤にかかる交通費について正社員は上限なく支払っているのに、非正規社員には上限を設けているケースがあったとします。

交通費は、通勤に必要な経費を支給する手当であり、職務内容と関係がないため、同一の取り扱いをすべきと考えられます。

「生活支援に関する手当」とは、たとえば住宅手当や寒冷地手当、単身赴任手当などが該当し、これらは、非正規雇用者に支給しなくても、不合理には該当しません。

正社員には転居を伴う異動があり、非正規社員と比べても、住宅費がより多くかかることから、正社員だけに支給しても不合理とは言えないと判断されています。

待遇の考え方

同じ仕事をしているとはいえ、その責任の程度に差がある場合があります。正規社員のほうに責任の比重がかかる場合は、同じ業務と這いえ、給与に差が出ることは容認されます。いわゆる仕事の「待遇」の考え方は

   継続して行う業務の内容+責任の程度
   職務内容と配置の変更範囲

から主に判断されます。

上記二つの要素がまったく同じである場合には、非正規社員であることを理由に、正社員との待遇に差をつけることが禁止されます。

一方どちらかが異なる場合は、役割のバランスに応じて判断します。

例えば、業務内容が同じ正社員と非正規社員のケースで、正社員が発注や在庫管理をし、繁忙期には残業が多くなるのに対し、非正規社員は発注や在庫管理、残業を求められないとします。この場合、責任の程度が異なるため「同一労働」とは判断しません。

企業に求められることは、非正規社員から求められれば、正社員とどのような待遇差があるのか、なぜその待遇差が生じているのかを説明する義務があります。

就業規則や賃金表、人事規定などの資料を使いながら口頭で説明することが必要で、単に「パートだから」「将来の役割期待が異なる」など主観的、抽象的な理由は説明になりません。

企業側は、「同一労働同一賃金」スタートにあわせ、非正規社員に説明を求められたときに的確な説明ができるよう、就業規則や賃金規定を見直し、手当の趣旨を明確にしておく必要があるのです。

「同一労働・同一賃金」が日本で実現障壁が高いのは

欧州にあるといっても、日本で実現するのは、極めてハードルが高いと言われています。その背景にあるのは、会社で働く考え方の違いにあると思われます。

それは、欧米中心に見られる「ジョブ型雇用」と、日本に多い「メンバーシップ型雇用」の違いにあるということです。

日本労働政策研究・研修機構の主席統括研究員の濱口桂一郎氏によるネーミングで広く知られる「ジョブ型」「メンバーシップ型」ですが…

「ジョブ型雇用」とは、仕事に対して人が割り当てられる雇用形態で、自分自身の専門スキルを活かして、職務や勤務場所を絞り込むものです。

ニュアンスでは限定社員とか有期契約社員というものになります。つまり、職務や勤務地、労働時間などを明確に定めて雇用契約を結びます。労働者は、ジョブディスクリプション(職務記述書)に書かれていない命令に従う義務はありません。例えば、転勤や職務の変更、残業などです。

企業としては、専門性の高い優秀な労働者を確保することができます。

欧米では「この仕事をしてもらいましょう。このポストに就いてもらいます」と職務を明確にして採用します。

「同一労働同一賃金」の考え方は、基本的に「ジョブ型雇用」を前提にしていたものです。

一方、日本の場合は、採用時にどこに配属されるか、どんな仕事をするかはわからない、つまり、先に採用してから仕事を割り振る雇用形態となっています。

いったん採用されたら、企業のメンバーとなり、辞令に従い異動もすれば転勤もします。

そのかわり雇用は基本的には定年まで保障されていて、年功型賃金のカーブが緩やかになってきたとはいえ、通常は、50歳前後まで給料は少しずつ上がっていくようになています。

日本特有の「年功序列・終身雇用」を前提としたのが「メンバーシップ型雇用」なのです。

「ジョブ型雇用」の場合は、自分のスキルにあった職場を選ぶことができ、欠員があれば採用もやりやく、自分の経験やスキルアップで給料を決めることができますが、プロジェクトごとの採用となるので、そのプロジェクトが終了すれば解雇され安いとも言えます。

その点では「メンバーシップ雇用」では、ある程度雇用は安定しますが、いまのように「年功序列・終身雇用」の前提が崩れると、その雇用形態の存在意義が問われることになります。

それがいまの日本社会だと言えます。

一般的に若いころは働きに比べると給料が安すぎるものの、中高年になると貢献度に比して給料をもらい過ぎとみられる人も少なくない。こうした日本のメンバーシップ型雇用の下では、「同じ仕事なら、同じ給料にしましょう」という同一労働同一賃金を導入するのは難しいと言われています。

 また、欧州では一般的に産業別労働組合が力を有しており、同じ産業内、職種内で給与水準が決められ、それがフルタイム勤務の正社員以外にも適用されやすい仕組みのため、同じ仕事なら同じ給料と定めやすいのに対して、日本では企業内労働組合が中心で、その多くは正社員が対象であるため、どうしても「同一労働同一賃金」導入を難しくしているところがあると言われています。

ただいずれにしても、企業風土や雇用形態を見直す前に、先に「同一労働同一賃金」が、社会風潮の流れで導入されることになりました。

「同一労働同一賃金」が横並びという単純な発想になると、どうしても賃金水準の低いほうにあわせようとするのが、中小企業の性でもあります。

これからは、働く側が、「組織」依存から「個」を中心とした考えに変えることで、自分のスキルを磨く大切さを理解することが大事になってくると思われます。

会社依存・制度依存から自分磨きへ…真の「自立」が試されると思われます…

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