東京オリンピック・パラリンピック1年延期による経済損失は6400億円あまり…
目次
- 1年延期の経済損失6400億円
- 金額に表せない損失
- 大会組織委員会の予算計画は
- スポンサー企業の苦悩
- 来年以降の世界大会日程はどうなる
- アスリート選考にも影響が
- 日本経済は大丈夫なのか
東京オリンピック・パラリンピック1年延期による経済損失額は6400億円あまり
東京オリンピック・パラリンピックが
1年間延期された場合の経済損失は6400億円余りに上り
中止になれば4兆円から7兆円の経済損失
という試算があるようです。
五輪開催は競技施設や輸送網など社会資本の整備に加え、観光需要の増大など様々な恩恵をもたらしますので、経済効果は建設業からサービス業まで幅広い分野におよびます。
大会運営費や観戦者による支出、テレビ購入費などの効果がなくなるほか、大会後の観光など「レガシー効果」もしぼむとされています。
スポーツ経済学などを専門にする関西大学の宮本勝浩名誉教授による試算で、東京オリンピック・パラリンピックが1年間延期された場合、競技場や選手村などの1年分の維持管理費が新たに発生するほか、各競技団体が選考大会などを改めて開催するのに必要な経費などを合わせると、およそ6408億円の経済損失があると推計しています。
1年後に延期される場合、改めて開催する選抜試合や周知に費用がかかる上、イベントの見送りなどの影響も、経済損失額には見込まれます。
さらに、中止になった場合は、施設整備はほとんど終わっているものの、大会の運営費や観客の消費支出などが失われるほか、大会後の観光振興や文化活動などの経済効果が薄れることから経済損失はおよそ4兆5151億円に上ると推計しています。
また民間試算では国内の経済的損失は延期の場合で6000億~7000億円程度にのぼるとしながら、中止なら新型コロナウイルス感染拡大による影響も含めて国内総生産(GDP)が1.4%、7.8兆円減るとの見方もあります。
今日の安倍総理とIOCバッハ会長との電話会談では、「1年程度」の延期となり、中止はありえないとしていますが、新型コロナウイルス感染拡大状況次第では、先行きどうなるかは誰にも予想することはできず、再延長はどうやらなさそうな会見内容ですので、今の時点で想定するものではないにしても、中止の可能性もゼロではないとも言えそうです。
第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは、五輪が延期もしくは中止になった場合、2020年の日本のGDPは1.7兆円減るとしていて、1984年のロサンゼルス大会以降の五輪開催国の経済成長率に基づき算定した結果、中止による開催年の損失は3兆2000億円程度とみています。
インフラ整備などの大半は開催前年までに進みますが、観光需要などが期待できなくなることが経済損には大きいようです。
また、SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは7月ごろまで新型コロナの感染拡大が続くと、長期にわたる訪日客の減少や国内消費の落ち込みなどが加わることで、上場企業の純利益は最大24.4%減ると予想しているようです。
金額に表せない損失
経済損失は、金額に表せない部分もあります。
たとえば、五輪開催は新たな技術やサービスを世界にお披露目する貴重な機会にもなることを考えると、開催が延期や中止となれば、こうした新技術の普及が遅れる恐れもあるとの指摘もあります。
東京オリンピック・パラリンピックでは、選手村でクリーンな水素エネルギーを使うなどの構想があります。選手村は大会後に民間住宅に転用し、将来は地下鉄の新線を通す計画もあります。こうした街づくりにもしわ寄せがおよびそうです。
大和総研の小林俊介シニアエコノミストは、延期によって分譲・賃貸用マンションとして販売された選手村への入居が遅れ、多額の負担が生じる可能性があると指摘し、五輪関連の物資納入や人手の確保もいったん白紙になり、「所得や雇用にも余波が及ぶ」と話しています。
晴海の選手村は大会後、約5600戸の分譲・賃貸用マンションになります。
今年の夏の五輪大会終了後、すぐに選手村は、居住用マンションに大規模リフォームに取り掛かることになっていました。
大会組織委員会の予算計画は
大会組織委員会にすれば、現行予算で900億円を計上するチケット収入は大きく、今年の感染チケット代は、今後どのような対応をするか分りませんが、原則返金しない方向という報道もありますが、返金対応となれば、収入計画も変わってきます。
延期した場合、組織委は既存会場の使用や期間中の営業補償などについて再交渉を余儀なくされるでしょうし、既に数千人を超す職員を維持するための人件費もかさむことも考えなければなりません。
中止になれば、パートナー企業への補償の必要性も考える必要が出てきます。
スポンサー企業の苦悩
東京五輪のスポンサー企業は約80社に上り、トヨタ自動車やパナソニックなど国内外の大手企業が名を連ねています。
五輪はサッカーワールドカップと並ぶ世界の二大スポーツイベントで、一度に大勢の人が集まるイベントでの宣伝効果ははかりしれません。
世界に自社商品を売り込む絶好の機会と位置付けて関連イベントや広告、CMなどに資金を投じてきただけに、やはり中止ではなくても1年延期になることへの失望感は大きいでしょう。
ある企業の関係者は延期について、広告関係費などの支出増加額が変わることに対して、不安を抱えているとのことです。
東京大会の国内スポンサー契約は、ここまで好調に推移していて、現行予算で3480億円と総収入の55%を占めています。
そのパートナー企業も、関連イベントや広告、CMなどにも予算を投じているだけに、制作費など損害は大きいでしょうね。
来年以降の世界大会日程はどうなる
延期は各競技の国際大会にドミノ式の影響を及ぼします。
2021年は陸上、水泳、体操、柔道、レスリング、卓球などの世界選手権が予定され、特に7~8月に開催される陸上、水泳は日程再編を迫られます。
もし2年延期となった場合、2022年は北京冬季五輪、杭州アジア大会、サッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会とビッグイベントが重なることになります。
アスリート選考にも影響が
五輪代表選考もどうなるかで、1年延期だと代表に内定している選手の処遇や、あるいは新たな選考が必要となるのか取るのかの問題もあり、今のところは全ては未定で、ひょっとしたら、各競技団体の方針に納得できずスポーツ仲裁裁判所(CAS)に訴える選手も出てくる可能性も考えられます。
2年延期なら、選手選考が白紙になる公算が大きく、全盛期を逃す選手もいるでしょうし、原則23歳以下の男子サッカーでは資格を失うケースもありそうです。
中止になった場合は、東京五輪のみの追加競技として行われる予定だった野球・ソフトボール、空手の選手が出場の機会を失ってしまうことになります。
日本経済は大丈夫なのか
日本にとっては、延期でも中止でも、2020年のGDPが大幅に落ち込むことは間違いないようです。
消費増税で、もともと経済が冷え込んでいるところに新型コロナウイルス感染拡大対策による自粛が重なり、そこに東京オリンピック・パラリンピック開催延期となれば、日本経済は本当に大丈夫なのでしょうか。
消費増税で昨年10~12月期GDPがマイナスとなり、このままではおそらく、ことしの1~3月期GDPもマイナスとなるでしょうから、2期連続マイナスはリセッション(景気後退)となります。
海外投資家の日本への評価が厳しくなることから、日本マーケットの動きが非常に気になります。日本売りが加速しなければよいのですがね…