キャリアショック(Career Shock)を考える~「VUCA」時代の生き方 収入ダウンに備える…
キャリアが陳腐化する…
将来を見据えてコツコツと積み上げてきたキャリアや、こうなりたいと思い描いてきたキャリア予想図が、ある時を境に一気に崩れ去り、ショックから新しい環境や状況に適応できなくなってしまう…
国内のキャリア研究の第一人者である、慶應義塾大学大学院特任教授の高橋俊介氏が提唱した「キャリアショック」という概念です。
キャリアが陳腐化する…
米国サン・マイクロシステムズのCEOだったスコット・マクナリーが、自社の社員に対し「同じ仕事を2年以上続けるな」と明言していた背景に、この考え方があるようです。スキルの蓄積は重要ではなく、それはただ陳腐化するだけだという、日本と米国の根本的な考え方の違いが垣間見れます。
今までの流れを重んじる日本とイノベーション重視の米国という構図があるようにも見えます。
「キャリアの陳腐化」の背景には、現代のビジネスを表す「VUCA時代」という言葉があります。
VUCA時代とは
- Volatillty(変動性、不安定さ)
- Uncertainty( 不確実性、不確定さ)
- Complexity(複雑性)
- Ambiguity( 曖昧性、不明確さ)
の頭文字をとったもので、「不測不能な状態」を意味します。つまり「将来の予測が困難な状況」なのが現代のビジネスだということです。
「キャリアが陳腐化する」「スキルの集積は陳腐化する」という発想は、まさに「VUCA時代」にあっては、必要とされるキャリアは、常に状況によって書き換えられる、アップデートされるものだということなのでしょう。
求められるのは「適応性(adaptable)」だということです。
キャリアショックを味わう日本人
キャリアショックが起こりやすいタイミングとしては、役職定年制度による異動や産休・育休制度によるキャリアの中断などが挙げられます。望まない異動でプライドが傷ついたり、キャリアが中断されることを不利に感じたりすることが、キャリアショックの原因となります。
企業の人材マネジメントにおいて、個人のキャリアショック克服をどう支援するかが重要なテーマとして浮上しているようです。
自分が今まで頑張ってきたことが認められない…
自分の業績が評価されない…
今までの積み重ねたキャリアがなくなってしまったような喪失感や焦燥感を感じ、キャリアショックに陥ると、仕事に対する意欲やモチベーションが低下し、仕事に対してだけでなく会社や組織に対しての不信感が増大します。仕事へのモチベーションも会社への信用も失った社員は、生産性が低下するだけでなく、退職を選んでしまう場合もあります。
そんなことで悩んでいる場合ではない、新しい環境に同対応するかを考えられるかどうかが、時代に生き残るには大事だということです。
ロボットや人工知能などのテクノロジーの発達により、今まで人が担当していた業務の置き換わりが始まっています。今後10年〜20年間で人口の半分の仕事が人工知能に取って代わられると予想されています。
あなたのスキルはAIが取って代わる…
だから、常にアップデートすることに心がけ、過去の時間を惜しむのではなく、未来の時間を切り開くこと集中すべきだということですが、日本人はどうも感情に動かされるところが多く、それは自分のキャリアに関しても割り切れないところがあるのでしょうかね。
収入ダウンに備えなければ…
自身のキャリアについて予想もしていなかったような「減給や降格を言い渡される」「希望していなかった部署に異動が命じられる」「現在の仕事がなくなる」といったことも想定されます。
例えば
- 働き方改革の残業規制による月収減少…
- 残業代が減り住宅ローンが払えない…
- 転職した結果、月収減少…
など、様々なキャリアショックの事例があります。
キャリアに対する考え方を見直すことが大事です。キャリアはその人を決めるアイデンティティーではない、「固執」するのではなく「経験」として生かすものだということです。これを慶應義塾大学大学院特任教授の高橋俊介氏は「つなぐ」ものと表現しています。
過去の仕事から得た経験知は、役割や環境が変わっても、自分の中に個性として身についているので、一つの仕事を続けることに執着するより、過去のキャリアを新しい仕事につなげて、培ってきた個性により磨きをかけるという発想に立つことが大事だとしています。
その上で。変化の激しい時代に求められる新しいキャリア形成に目を向けることが大事だとしています。
キャリアは、守るものではなく常にバージョンアップさせるものであり、その視点は時代の流れにあり、それが人をアップデートさせるのです。
常に情報を入手し、それを自分のキャリアに生かすために
- セミナーへの積極的に参加する…
- ボランティアなど少しでも興味のある環境にすすんで身を置く…
など、別の環境から学び、固定概念を無くすことが大事になってきます。
社会においてもっとお大事なのは「コミュニケーション能力」だと言われています。それは情報入手においても、情報発信においても大事なことです。
- 仕事の要領や、人との関わり方といったポータブルスキルを意識して伸ばす…
- 知識や専門性を高める前に、人柄や人間力を高める…
専門知識の深堀りにより、視野が狭くなることが危険だということを認識し、コミュニティーを作ること、自分の情報ネットワークを作れるかを意識することです。
そのために自分はどう変わらなければならないかを客観的に把握することが大事になってきます。
「固執」から離れて「経験をつなぐ」意識への変換が大事だということですね…