顕在化するシングルマザーの貧困問題

「ひとり親世帯」の実態

厚生労働省がまとめた「令和3年度全国ひとり親世帯等調査(令和3年11月1日時点調査)」、この調査は、全国の母子世帯と父子世帯及び父母ともにいない子が祖父母などに養育されている養育者世帯の実態を把握し、福祉対策の充実を図るための基礎資料を得ることを目的として、おおむね5年ごとに実施しています。

前回の調査は、平成28年度に実施しています。

この報告書では、対象とした4,105の母子世帯、1,329の父子世帯、123の養育者世帯のうち、2,653の母子世帯、866の父子世帯、93の養育者世帯から有効回答を得て集計したとあります。 

それでこの「令和3年度調査」の結果、令和2年の母子世帯の母自身の平均年間収入は272 万円で、母自身の平均年間就労収入は236 万円、世帯の平均年間収入(同居親族を含む世帯全員の収入)は373 万円となっています。 

世帯の平均年間収入( 373 万円)は、国民生活基礎調査による児童のいる世帯の平均所得を100として比較すると、 45.9となっています。

一方で、 令和2年の父子世帯の父自身の平均年間収入は518 万円で、父自身の平均年間就労収入は 496 万円、世帯の平均年間収入(同居親族を含む世帯全員の収入)は606 万円となっています。

 世帯の平均年間収入( 606 万円)は、国民生活基礎調査による児童のいる世帯の平均所得を 100 として比較すると、74.5となっています。

 母子世帯の母の預貯金額も少なく、貯蓄がない世帯も多くあり、母子家庭と父子家庭で、こんなにも大きな収入の開きがあるのですね。 

この数字だけを見ても、シングルマザーの貧困問題はかなり深刻だということを、受け止めなければなりません。

シングルマザーの貧困率が高いのは、収入面では「正規雇用に就きづらい」「養育費が貰えない」ということがあげられます。

子供が幼いときに離婚するケースも多く、父子家庭にも言えることかもしれませんが、仕事と育児の両立が難しいということがあげられます。

病気や怪我で収入がゼロになる恐怖もつきまといます。

この延長線上にある話でrはないですが、コロナ・パンデミックにより女性の自殺者が増えていることが社会問題になっています。

働く女性の自殺

政府は2023年10月20日の閣議で、2023年版の自殺対策白書を決定しました。

2022年の男性自殺者は1万4746人で13年ぶりに増加し、小中高生は514人と過去最多となりました。

女性は7135人で、3年連続で増加です。

2022年の自殺者数は2万1881人(前年比874人増)、自殺率(人口10万人当たりの自殺者数)は17.5で前年(16.7)を上回りました。男性は前年から807人、女性は67人増えました。

年代別では、50代や80歳以上の上昇が顕著で、職業別では「無職」が最多です。

原因・動機別では、全ての年代で「健康問題」が最も多く、「家庭問題」と「経済・生活問題」が続きました。

また、主要7カ国(G7)のうち、日本の自殺率は最も高かったとのことです。

2023年版白書では自殺者の配偶者の有無、高校生の教育課程別の構成比や原因・動機などが新たに調べられました。その結果、男女いずれも、配偶者がいない単身者の割合が多かったとあります。

シングルマザーの貧困の延長線上に「自殺」があるということではないですが、これだけシングルマザーの貧困問題が深刻な状況だと、まさに命に関わることになりはしないかと、すごく大きな懸念を抱いています。

さらに、日本社会の大問題として「子供の自殺者増加」というものがあります。

子供の自殺数増加

事実として、2022年の自殺者のうち、小中高生は514人と過去最多となりました。

高校生の4分の1は定時制・通信制の生徒で、女子生徒の割合が高かったそうです。

原因・動機では、全日制が学業不振やいじめなど「学校問題」の占める割合が大きかった一方、定時制・通信制では「健康問題」が多かったとあります。

厚生労働省の担当者は、自殺者数の増加について「新型コロナウイルスの影響もあると思うが、明確な要因は分からない」と分析、教育課程別の調査については、「健康問題が定時制・通信制で相対的に大きいことが分かった。今後分析を通じて政策につなげていきたい」と話しています。

この子供の自殺者増加は、かなり深刻な社会問題だと認識しています。

このことについては、更に詳しく検証したいと思います。

もう少し観点を広げて「日本の貧困」について検証してみます。

相対的貧困と絶対的貧困

「貧困」というテーマで日本を語れば、“先進国最悪”“米韓に抜かれた相対的貧困率”と報じられています。

まずはこの「相対的貧困」「絶対的貧困」という言葉の整理をしてみましょう。

以下、「World Vision」のサイト内の解説がわかりやすかったので、このサイトを参考に引用しました。

https://www.worldvision.jp/children/poverty_18.html#:~:text=%E7%9B%B8%E5%AF%BE%E7%9A%84%E8%B2%A7%E5%9B%B0%E3%81%AE%E5%AE%9A%E7%BE%A9,%EF%BC%88%E6%B3%A86%EF%BC%89%E3%80%82

相対的貧困

相対的貧困」とは、その国や地域の水準の中で比較して、大多数よりも貧しい状態のことを指しています。所得でみると、世帯の所得がその国の等価可処分所得世帯の可処分所得を世帯人数の平方根で割ったもの)の中央値(50%または60%)の半分(貧困線)に満たない状態のことを言います。

基準となる貧困線は、総務省の全国消費実態調査では 135 万円(2009 年)、厚生労働省による国民生活基礎調査では 122 万円(2012 年)とされています。

絶対的貧困

絶対的貧困」とは、国・地域の生活レベルとは無関係に、生きるうえで必要最低限の生活水準が満たされていない状態を示します。

私たちが一般に「貧困」と聞いてイメージするのはこちらでしょう。

現在では世界銀行の定めた国際貧困ラインを基準に、衣食住など、最低限必要とされる生活物資を購入できる所得または支出水準に達していない人々のことを絶対的貧困者と呼んでいます。

世界銀行は2015年に、1日1.90ドル(1ドル148円換算で281.2円)を国際貧困ラインに改定しました。

日本は貧しくなった…

日本が貧困になっている要因として、「“高齢者”と“単身世帯・一人親世帯”の貧困」を挙げています。

郡部・町村居住者の収入が低いことも、要因として考えられます。

厚生労働省が2023年7月4日に公開した「2022(令和4)年 国民生活基礎調査」で、2021年の相対的貧困率が15.4%と示されています。

日本の子どもの貧困率は11.5%、ひとり親世帯の貧困率は44.5%で、日本全体は15.4%。これは、国民全体では6.5人に1人が貧困、子どもは8.7人に1人が貧困、ひとり親の2人に1人が貧困であることを表しています。

ここからも、ひとり親家庭の貧困、とくに「シングルマザーの貧困」、そしてその先にある「こどもの貧困」が、日本の大きな社会問題となっていることがおわかりいただけるでしょう。

前述の通り、シングルマザーの文脈ではないでしょうが、働く女性の自殺者が増えています。さらにこどもの自殺も増えているのです。

日本の社会は、完全に“病んで”います…

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