話題の「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」を考える、早期退職とセミリタイアとどう違うの…?

早期退職、セミリタイア、そしてFIRE…?

いま巷では「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」という言葉が注目されています。「経済的に自立し、早期リタイアを目指す」という意味のようです。

「早期退職」という言葉もありますが、この「FIRE」という言葉のポイントは「F:Financial(財政面)」と「I:Independence(自立)」にあるようで、リタイア後の経済的心配をなくすことにに注目した言葉のようです。

「セミリタイア」という表現もありますね。

早期リタイアと変わらないのでしょうが、「セミリタイア」の方には、「退職する」ことに強い意志が感じられる表現ですね。

たとえば、リタイア後にやりたいことが明確になっているとか、仕事をしないことによって生まれる時間を使って、何をするかという具体的なイメージがあるのが「セミリタイア」という表現には感じられます。

「早期退職」よりも「セミリタイア」の方が、ポジティブな感じがあります。

それは、「なにをするか」「なにを楽しむか」という、「生きがい」を明確にイメージしているように思えるからです。

「FIRE」は、退職後の生活を経済面で支えることに注目しています。

退職後の経済的自立にフォーカスしていて、この言葉からは、仕事を離れた時間でなにをするかという行動レベルのことは注目していないようです。「生きがい」は考慮しない、あくまでも「F:Financial(財政面)」のみに、焦点を当てているようです。

「早期退職」と「FIRE」に関しては、経済的な違いについてこんな説明があります。

「早期退職」は、会社都合の場合だと割増された退職金を受け取れることもありますが、基本的に退職後は受け取った退職金と将来受け取る公的年金や貯金などを元手に、少しずつ切り崩しながら生活していくのに対して、「FIRE」は経済的自立のために意欲的な貯蓄をし、退職後は運用益などで生活し、元手(元本)は減らさないようにすることで、何歳まで生きても問題がないように備えるとしています。

「早期退職」は、場合によっては再就職も視野にあり、「FIRE」には働く必要はないという感じです。

「退職後」と「老後」は、実際にはリンクしてはいないのですが、イメージレベルでは、多くの人は“一致”させているように感じます。つまり、老後とは、年齢で区切るのもありますが、「仕事をやめた後」という概念があるように思えます。

「年間支出の25倍」と「“4%”ルール」

この「FIRE」におけるリタイアのための準備資金に関しては、本家のアメリカでは「年間支出の25倍」と「“4%”ルール」があります。

老後必要準備金額の計算は、「毎年の生活費の25倍貯める」というものです。

例えば年間の生活費が240万円(月々20万円)だったとした場合、その25倍の6,000万円の貯蓄額ができたら、早期リタイアが可能とする考え方です。

生活レベルで、必要貯蓄額は異なります。

月10万円の生活費なら、年間支出は120万円、この25倍は3000万円になります。
月30万円の生活費なら、年間支出は360万円、この25倍は9000万円になります。

考え方としては、老後に備えておくべき必要資金を考えるには、必要な支出から割り出すということです。

一方「4%」ルールというものがあります。

これは、老後生活の規模を貯蓄額から考えるもので、年間支出を貯蓄額の4%未満に抑えることができたら、おおよそ30年間は貯蓄で生活が維持できる確率が高まるというものです。

前述の例で見ると、貯蓄額が6000万円あると、1年間の支出を4%になる240万円未満にしなさいというものです。

貯蓄額が3000万円だと、4%ですから、年間支出120万円未満におさえなさいということになります。

30年ですから、60歳の人だと、90歳までの支出は見通せるということになります。

どちらも、導き出される老後準備としての必要額は同じなのですが、アプローチが違うということですね。

さらに、ここから考えられることとして、「4%」という数字を運用利回りに置き換えると、元本を減らさずに支出を賄うことができるという景色が見えてきます。

6000万円あれば、年間利回り4%の運用が実現できれば、元本を減らさずに240万円という生活費が生み出せるということです。

これらの老後準備資金の話は、公的年金や退職金は考慮していません。あくまでも「FIRE」の考え方を紹介しているに過ぎません。

年間利回り「4%」の運用とは…

現実に不可能な数字ではありません。

大事なのは「絶対額を確保する」ということです。最初の1年間は「運用の年」と決めて、年末に4%の利益を換金して翌年にそれを使うという、利益の循環を作ることが大事です。

長期投資だと言って4%の利益を換金しないで、そのまま持ち越すのではありません。

短期投資を否定しないでください。

もっとも運用期間1年は、十分な長期投資ですけどね。

できるようになれば、毎月必要経費額を引き出す「1ヶ月運用」の循環ができればよいですね。必要額以上に利益が貯れば、それは持ち越せばよいのです。

逆に目標額に到達しなければ、利益分だけを受け取っても良いですし、給与等、別のところから必要生活費を補填することで、利益額はそのまま持ち越すというのも考えられます。

損失が出たらどうしましょう…

損失分を補填するか、そのまま元本が目減りした状態で運用を続けるかですね。

ここで大事なのは、含み損のままにおいておくのではなく、必ず損失は確定するということです。そのために、事前に許せる範囲の「損失額」を決めておくのです。

例えば2%マイナスになれば損失を確定すると決めたら、どんな状況であっても、その時点で一旦運用はやめるということを徹底することです。「損切り」です。

損失分を給与等で埋めるにしても、その額は少ないほうが助かります。下が手、損失額を許せるある程度のハニに固定しておくと、後々気持ちが楽になります。

村議ロをした後に、運用の仕切り直しをすることが大事です。損が出たからと、運用することを諦めないでください。

「FIRE」には結構なお金が必要です…

ここまでは「FIRE」の考え方を紹介しました。

ネット上で「FIRE」に関する記事やコラムを見ていると、「○○千万円」という単位でお金が必要になるので、今から資産運用しましょうというアピールが多いですね。

金融機関が発するコラムだと、そのままNISA口座開設やiDeco勧誘、さらには投資信託購入を勧めるといった具合で、不動産会社が発信するものの落としどころは、アパート経営とかの不動産投資に向かっているようです。

「FIRE」が、金融機関や不動産会社の「セールストーク」「宣伝材料」になっています。

まあそれはそれでわかりますが、情報は「どこが発信しているか」が大事だということです。

あと何年後か、自分が想定している退職年齢になるまでに「千万円」単位のお金を用意しなければ、「FRE」は成り立たないのであれば、それはそれで、かなりハードルは高いですね。

今から気合を入れて、投資と向き合わないといけないですね…

早期リタイアで“幸せ“になれるのか…?

豊かな老後…というキーワードがあります。

「豊か」という言葉を細かく因数分解すると、金銭的な豊かさの他に、健康であることや、精神的ゆとりといった部分もクローズアップされます。

その要素に順位をつけるとしたら、次のように優先順位がつけられます。

  1. 健康
  2. 生きがい
  3. お金

何より優先されるのは、「健康であること」です。いくらお金があっても、ベッドで寝たきりでは使いようがありませんからね。

一にも二にも「健康第一」ということは、譲れないでしょう。

次に大事なのは「生きがい」です。生きているという実感がなければ、ただただ延命しているに過ぎません。

この「生きがい」の見つけ方は、それこそ人それぞれでしょうが、会社勤めの方が仕事をしなくなって急激に老け込むようなことがないように、何より大切なのは、仕事をしなくなって生まれた「時間」を、どのように使うかということを考えることです。

カルチャースクールに通うのも良いですし、大学に行き直すのも良いですし、趣味に没頭する、ボランティア活動をするなど、それぞれやりたかったこと、仕事をしている間はできなかったことにチャレンジすることが、大事だということです。

社会とのコミュニケーションを取ることは、重要です。退職したからといって、いきなり社会との関係を断ち切ることはありません。今までとは違う形でも、何らかの形で社会と関わり合ったほうが「生きがい」を見つけられると思います。

そのためにもお金は必要だということです。

健康や生きがいを支えるのが「お金」だということです。

お金だけがあってもダメですね。お金を使う目的が大事です。ただ、お金がなければ健康も生きがいも、満足なものは得られないというのも考えなければなりません。

「FIRE」は、あくまでもお金の側面でしか語っていないです。仕事をせずに悠々自適の老後生活を送るという思いだけであれば、それは「生きがい」という大事な要素が欠落しているプランニングだということになります。

老後プランニングとしては不十分です。

老後生活の行動を具体的に意識することが、何よりも大切なのです。

単純に「FIRE」を求めるのではなく、「セミリタイアでやりたいことをやる」という発想のほうが良さそうですね…

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